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ニーチェ

常に幸福が幸福たるゆえんのものは一つである。
すなわち忘れうるということ、あるいはもっと学者らしい言葉遣いで言えば、ある継続のあいだ非歴史的に感ずる能力、これなのだ。
すべての行動に忘却が必要なことは、すべて有機体の生命にとって、光だけでなく、闇もまた必要なのと同様である。

出典・参考・引用
世界文学大系42「ニーチェ」(生に対する歴史の利害について - 第二反時代的考察)p312
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ニーチェ

常に幸福が幸福たるゆえんのものは一つである。
すなわち忘れうるということ、あるいはもっと学者らしい言葉遣いで言えば、ある継続のあいだ非歴史的に感ずる能力、これなのだ。
一切の過ぎ去った事どもを忘れて、瞬間の敷居に腰を落ち着けえない者、勝利の女神のように、眩暈もなく恐怖もなく、ただ一点の上に立ちつくすことができない者は、幸福のなんであるかをけっして知らないであろうし、もっと悪いことには、他人を幸福ならしめるなにものをもなさないであろう。
極端な例だが、忘却する力を全然持ちあわさないで、いたる所に生成流転を見るように宣告されているといった人間を想い描いてほしい。
そういう男はもはや、自分自身の存在を信じない。
自己自身に対する信念を失う。
彼は一切が動く点に飛び散るさまを見、この生成の流れのうちに自己を見失って、れっきとしたヘラクレイトスの弟子のように、最後には指一本動かすこともできなくなるだろう。
すべての行動に忘却が必要なことは、すべて有機体の生命にとって、光だけでなく、闇もまた必要なのと同様である。

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