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ニーチェ
自分の知っている以上のものを聞きだすことなどは、誰にもできない。
体験から近づく道を持ち合わせていない場合には、聞き取る耳などない。
私というものを幾分か理解したと思った人は、かれ自身の姿にあわせて、私を適当にこしらえあげたのであって、それが私の正反対、たとえば“理想主義者”になってしまったことも稀ではないのである。
- 出典・参考・引用
- 世界文学大系42「ニーチェ」(この人を見よ-いかにしてひとは自己自身となるか)p379
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この人を見よ
結局、本もいれてあらゆる物から、自分の知っている以上のものを聞きだすことは誰にもできない。
体験から近づくみちを持ち合わせていない場合には、聞きとる耳などない。
ひとつ極端な場合を考えてみよう。
頻繁に経験する、さらにはまれに経験するといった可能性からまったくはずれているような体験ばかりを、ある本が語っている場合である。
つまり、それが新しい一連の経験に対する最初の発言であるような場合だ。
この場合にはまったく何も聞こえない。
そして、何も聞こえないところには、何も存在しないという音響学的錯覚がこれに伴う。
これが結局、私のおしなべての経験であり、言うならば、私の経験の独自性でもある。
私というものを幾分か理解したと思ったひとは、かれ自身の姿にあわせて、私を適当にこしらえあげたのであって、それが私の正反対、たとえば「理想主義者」になってしまったこともまれではない。
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