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安岡正篤

人間みずからが自由の利く者でなければならぬ。

出典・参考・引用
安岡正篤「東洋宰相学」p63-64
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安岡正篤

いずれの社会も、ある時期に、その活力が衰えて組織機構の硬化することがある。
また一部の傷害や疾病のために全体の機能に障碍を生じて混乱に陥ることもある。
そういう時に硬化を救って新しい活を入れたり、混乱を収めて機能を回復することは至難の業である。
しかしそれが行われなければ、その社会は滅亡のほかはない。
その能く行われるのはどうしてもある中心人物の出現に待たなければならぬ。
撥乱反正、乱をおさめて正に反すとか、創業垂統、業を創め統を垂るというのはこういうことである。
この種の人物は従来の型に嵌った、世にありふれた人物、すなわち凡人ではいけない、どうしてもそういう凡人離れしたという意味で英雄でなければならぬ。
型に嵌るという点では、従来の支配階級、貴族や富豪になるほど、型が強いから、その階級の人間を一層凡にし易い。
きまりきってしまった、あるいはどうにも収まらない世の中を、何とか自由にしようというのであるから、そういう人間自らが自由の利く者でなければならぬ。
ところが人間は学校に入ればそこの教育の型に嵌められ、学問すれば、その思想の型に嵌められ、地位仕事につけば、その規定の型に嵌められる。
だから地位身分があり、仕事が定まり、教育学問が授けられた者ほど、却って拘束力が強くって、これを解脱する自由の力などは世の常の人々、凡人にとうてい持てるものではないのである。

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