先頭が「き」の四字熟語の意味と読み方
金甌無欠
完全で欠点のないこと。
また、他国から一度も侮りや侵略を受けたことのない強国の意にも用いる。
甌は小さいかめのことで、傷ひとつない黄金の
出典は南史の朱异伝。
類義語に「完全無欠」「完璧」など。
- 類義語
- 完全無欠
- 金甌無欠
- 完璧
- 出典・参考・引用
- 李延寿「南史」朱异伝
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南史
大清二年、中領軍と為る、舎人故の如し。
初め、武帝、夢に中原
吾、
異曰く、
此れ
侯景の降するに及び、勅して群臣を召し延議す。
尚書僕射謝舉等
武帝之を納るを欲し、未決す。
嘗て
我が国なほ金甌の一傷欠無きがごとく、
今、便に地を受くる、なんぞ是れ
あるいは
異、帝の
今、侯景、魏国の大半を分かちて、聖朝に遠帰す。
若し受け容れずんば、絶後し望みの来らんことを恐る、と。
帝、異の言を深納し、又た前夢を感ずるに、遂に之を納る。
大清二年、中書通事舎人であった周伊は中領軍に累進した。
以前、中原を平定する夢を見た武帝は、朝廷を挙げて祝い、とても悦んで周伊に語って云った。
吾は平生から夢はあまり見ない、この夢には何か実を感ずる、と。
周伊が答えて云う。
此れは天下を征する正夢でありましょう、と。
しばらくして北朝・東魏の侯景がその封土を持って梁に帰順を求めてきた。
武帝はこれを如何にするべきか群臣を召して議論した。
尚書僕射の謝舉らは帰順を許すべきではないとしたが、武帝には受け入れたい気持ちもあって決めかねていた。
ある時、朝早くに武帝が独り云う。
わが国は金甌無欠といえる程に長くよく治まっている。
今、たやすく領土を受けるといっても、これは時宜というものかもしれぬ。
もし紛紜としてしまったとしても、悔いの及ぶ所は無い、と。
周伊が武帝の想いを受けて云う。
御世は聖明にして、天機は我々にあるというべきでしょう。
北土の遺民は誰も慕い仰ぐ相手が居らず、その心は明主を望んでおります。
今、侯景は魏国の大半を持って、我が国へと帰順を求めております。
もしこれを受けなければ、このような慶兆は今後来ないかもしれません、と。
武帝は周伊の言を聞き、また、以前見た夢を思い、遂に帰順を認めた。
後にこれが禍となり、侯景の乱が起って武帝は幽閉の内にその生涯を終えることとなる。
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語句解説
- 称慶(しょうけい)
- 慶を称す。寿を祝う、喜ぶ。
- 周伊(しゅい)
- 周伊。朱异、周異とも書かれる。梁の武帝に仕えて権勢を得た。奸臣として平家物語に登場。
- 生平(せいへい)
- 平生のこと。普段。
- 宇内方一(うだいほういつ)
- 宇内は天地四方の内で天下のこと。方は方形で大地を意味し、一はすべてを意味する。
- 夙興(しゅくこう)
- 朝早く起きること、朝早くから勤めること。
- 承平(しょうへい)
- 平和が長く続くこと
- 事宜(じぎ)
- 事が宜しい。物事を行うのにちょうどよい頃合の意。
- 紛紜(ふんうん)
- 複雑に入り混じる様。
- 微旨(びし)
- 奥が深くて微妙な趣旨。それとなく示された志。
- 御宇(ぎょう)
- 天下を統治する。天子の治める御世。
- 蒼玄(そうげん)
- 天のこと、蒼天。
- 遺黎(いれい)
- 亡国の民または遺臣。