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サミュエル・ガース[1]
名誉の失われし時は死こそ救いなれ、死は恥辱よりの確実なる避け所。
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サミュエル・ガース
近代の神経学者は、腹部脳髄とか腰部脳髄とかいうことをいい、腹部や骨盤に存在する交感神経中枢が、精神作用により、極めて強い刺激を受けると説く。
この精神性理学的見解がいったん認められるならば、切腹の論理はごくたやすく組み立てることができる。
「我はわが霊魂の座(いま)すところを開き、貴殿にそれを見せよう。穢れありとするか、清しとするか、貴殿みずからこれを見よ」。
私が自殺の宗教的、あるいはさらに道義的正当性を主張しているなどと、誤解されたくはない。
しかし、名誉を何よりも重んずる考え方は、多くの人々にとってみずからの生命を棄てる十分な理由となった。
名誉の失われし時は死こそ救いなれ、死は恥辱よりの確実なる避け所。
とガースが歌った感慨に、どれだけ多くの人々が従い、唯々として彼らの魂を黄泉の国に引き渡したことか。
新渡戸稲造「武士道」p111より。
サミュエル・ガース(Sir Samuel Garth)は詩人で医師。
1661-1719年。
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