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先頭が「は」のことわざ・慣用句の意味と読み方

杯中の蛇影(はいちゅうのだえい)

疑えば何にでも気を病むようになること。
何でもないことに気に病んで憂うこと。
出典は晋書の楽広伝。
壁に掛けてある角弓の蛇の画が酒杯の中に映り込み、それを酒杯の中に蛇が居ると勘違いして心を病んだという故事。
真実を告げられるとその憂いは忽ち消え去ったという。

類義語
疑心暗鬼
杯中の蛇影
幽霊の正体見たり枯れ尾花
窃鈇の疑い
出典・参考・引用
「晋書」巻43・列伝13・楽広伝
関連タグ
ことわざ
慣用句
出典
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晋書

楽広、河南の尹に遷る。
嘗て親客しんきゃく有り、久闊きゅうかつして復た来たらず、こう、其の故を問ふ。
答へて曰く、
さきに坐する在り、酒を賜ひこうむる。
まさに飲まんと欲するに、杯中はいちゅうを見るや蛇有り、こころ甚だ之をにくむ。
既に飲みてめり、と。
時に河南かなん庁事の壁上へきじょうに角有り、漆画しつがに蛇を作る。
広、おもふ、
杯中の蛇は即ち角影かくえいなり、と。
復た酒を前の処に置き、客に謂ひて曰く、
酒中復た見る所有りやいなや、と。
答へて曰く、
見る所初めの如し、と。
広、乃ち其の所以を告げ、客、豁然かつぜん意解いかいし、沈痾ちんあとみゆ。

楽広が河南尹となった。
かつて楽広と親しくする者が居り、どういう訳か長い間来なかった。
疑問に思った楽広はその理由を尋ねた。
答えて言った。
前に伺って酒を頂いたとき、飲もうとすると酒の杯中に蛇がいるのを見つけました。
何とか飲みましたが、とても恐ろしく、それ以来どうも調子が悪いのです、と。
不思議に思った楽広が役所の客間を見渡すと、壁に角弓があった。
それには漆画で蛇が描かれていた。
楽広は思った。
酒の杯中にいたという蛇はこの角弓の影に違いない、と。
再び客を呼んで前と同じ場所に酒を置き、客に言った。
酒中にまた蛇は見えませんか、と。
答えて言った。
ああ、前と同じように見えます、と。
楽広はその理由を客に告げた。
客は豁然かつぜんとして理解し、憂いは忽ち消え去ったという。

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語句解説

久闊(きゅうかつ)
ご無沙汰。長く会わないこと。久しく便りの無いこと。闊は間があくことをいう。
豁然(かつぜん)
悟ること。迷いや疑いが忽然と解ける様。ぱっと目の前が開く様子。からりと開くこと。
沈痾(ちんあ)
長患い。なかなか治らない病気。


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