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先頭が「あ」のことわざ・慣用句の意味と読み方

穴があったら入りたい(あながあったらはいりたい)

身の置きどころが無いほどに恥ずかしい。
穴に入って身を隠したいほどに恥じ入ること。
出典は賈誼新書の審微。
季孫は斉の侵攻に際して麦の収穫を許さなかった宓子賤ふくしせんの真意を察せずになじったが、自分の非に気付くと深く恥じて「穴があったら入りたいものだ、宓子に会わせる顔がない」と述べた。

出典・参考・引用
賈誼「賈誼新書」審微
関連タグ
ことわざ
慣用句
出典
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賈誼新書

宓子ふくし亶父たんぽを治む、是に於いて、齊人、魯を攻めて亶父を過ぐ。
始め父老ふろう請ひて曰く、
むぎすでに熟せり、今、齊のこうせまらる。
民、刈穫かいかくに及ばず、請ふ、民人みんじんをして出でて自ららしめん。
傅郭ふかくの者帰りて以て食を益すべし、つ寇にせず、と。
三たび請ふ、宓子ふくし聴かず。
にはかにしてむぎことごとく齊のこうに資す。
季孫きそん之を聞きて、怒りて人をして宓子ふくしめて曰く、
あはれむ可からずや。
民や、寒耕かんこう熱耘ねつうんして、すなはち食を得ざるなり。
知らずとも猶ほ聞く可し、或ひは以て告げて、而して夫子ふうし聴かざりき、と。
宓子ふくし蹴然しゅくぜんとして曰く、
今年むぎ無くんば、明年う可し。
たがやさざる者をしてることを得しむれば、是れこう有るを楽しむなり。
且つ一歳のむぎは魯に於いてきょうを加へず、之をうしなふも弱を加へず。
民をして自ら取るの心有らしめば、其のきず必ず數年まざらん、と。
季孫、之を聞きてぢて曰く、
穴をして入るべからしめば、吾れ宓子ふくしを見るに忍びんや、と。

宓子賤ふくしせん亶父たんぽの地を任されていた。
ある時、斉が魯を攻めて亶父に至った。
町の長老が請願して言った。
麦は既に実っています。
今、まさに斉の来襲に迫られていますが、いまだに収穫することが出来ておりません。
町の者を出して自ら刈り取らせましょう。
そうすれば我々の糧食は増し、敵は何も得ることが出来ません、と。
再三要請したが、宓子ふくしは許さなかった。
斉が至ると、あっという間に麦は刈り取られてしまった。
これを聞いて怒った季孫は、人を遣わして責めて言った。
どうして哀れに思わぬのか。
民は寒さにも暑さにも耐えて耕したのに、食を得られなくなってしまったのだ。
知らないで済まされることではない。
ましてや再三請われてそれでも聴かなかったというではないか、と。
宓子ふくしは形を改めて言った。
今年、麦が得られなかったのならば、来年また植えればよいのです。
もしも耕してもおらぬ者に麦を刈り取らせたとすれば、これは敵の来襲によってよい思いをさせたことになります。
それに一年の麦を得たとしても魯は強くはなりませんし、失ったとしても弱くはなりません。
しかし、民に働かずして収穫できるという心を持たせてしまえば、その弊害は必ず長い年月残ってしまいます、と。
季孫はこれを聞いて恥じて言った。
穴があったら入りたいものだ。
どうして宓子ふくしまみえるに耐えられようか、と。

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語句解説

傅郭(ふかく)
都城近く。近郊。


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