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補記

器の長

器の長とは器ではない。
あらゆる器を統べて、自然なるがままに全てを導くものである。
器は限定である。
限定されしものを統べるは、限定されぬものでなければならぬ。
退を好むは、その環境に支配されずして自分を自分のままに尽くす者にしてはじめて出来る。
私利私欲などは微塵も存せず、どうしてもと求められればそこで己の力を尽くし、求められざれば自由気儘にその生を楽しむ。
功利に走って地位を求め、金を求め、名誉富貴に心を奪われる、そのような人々には得られぬ境地であり、無為自然の最たる姿である。
無為自然なれば自ずから慈愛の心のままに在り、倹約節倹を存するようになる。
これ人の至れし姿である。

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