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補記

多福を求める所以

多福を求める所以は天に在らず。
自己の心上を尽くして天に合すが故に多福を得。
故に“福は己より求めざる無し”との嘉言あり。
師は「長」であり「則」である。
殷が未だ師を喪わざるの間、祖先の立てたる道に違わずしてその治世は全し。
然るに時を経て次第に先祖の則を忘れ、紂王に至りて無道甚だし。
紂の無道は天心に相反し、遂にその居を喪う。
これ福を自ら棄てるなり。
故に曰く、
宜しく殷に鑑みるべし、駿命易からず、と。
天命は必ず定まるが故に定まり難し。
天徳に合せば必ず定まり、これに悖れば必ず喪う。
喪う所以は天に非ず、人が自らこれを棄つるなり。
因果応報を想うべし。
令名を述べ顕す所以は、善を称えて人心をそこに帰せんことを想う。
善を称えて自然にして人々に善の何たるかを知らしめる。
さすれば人々は悪を為すを恥とし、善を為すを誉れとす。
法で縛るは天心に通じず、自ずから存する善心を興起せしむるは人主たるの最も務むべき所であろう。

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