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補記

本当の所有

そのあるがままの立場において己を尽す。
ここで重要なのはその立場において常と変わらずに“善く”演ずるということである。
決して無気力に生きるわけではない。
“善く”演ずるのである。
常なる自分、絶対的な自分を存するからこそ、環境に左右されずに己の意志を発することができる。
もしも、与えられた役割が貧乏人であったとすれば、富むことを望んではいけない。
その環境を受け入れ、ひたすら尽すのだ。
名誉富貴といったあらゆる外的要因は自分自身の所有ではない。
自分自身の本当の所有は、その心しかない。
だから、外物などに惑わされることなく、その心を尽すのだ。
やがて他の役割を与えられることがあるかもしれない。
さすれば、それを泰然として受け入れ、その環境における自分自身をそのままに尽すのだ。
富もうが貧しかろうが、絶頂に居ようが艱難に陥ろうが、あなた自身に変わりはない。
そんなものに捉われて、心を亡くしてしまうことほど悲しいことはないのである。
素行自得によりてその人生を尽す。
さすれば、その人生は幸福であろう。
あらゆる事象に対する喜怒哀楽は、すべて心より生ずるだけなのだから。

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