先頭が「と」の語彙の意味と読み方
道徳
道徳とは自然発生的に体得せし状態をいう。
体得せし状態とは、その個人もしくは社会や共同体において善しとする規範や倫理観などが渾然と調和している様をいう。
ただし、善しとするからといって必ずしもそれが正しいとは限らない。
個人においては私心に覆われ、社会においては政治的に利用され、または衆論に堕し、功利的な面に流されて偏向してしまう。
故に道徳には善悪吉凶の別が存するのである。
道は人の歩みしものであり、徳は道が己へと生ぜしものである。
ゆく道が正しければ徳もまた善、道が正からざれば徳もまた悪となる。
道の是非は他に定められるものではなく、如何に己へと帰するかによる。
人が外物に覆われずして自己に帰することが叶えば、その素のままに歩むものが正しき道なのである。
儒教において仁義を説き、禮を云うは、人の己に帰せずして外に惑い、自己を忘却して心を失ってしまうが故に、その覆われを払う必要があるためであり、黄老思想において無為を説き、虚を云うは、他に捉われずして人は静であり、静にして初めてその心を素のままに発現できるが故なのである。
一般的に道徳を良心の発揚の如く用いるのはこのためであり、本当に素の心へと反れば、良心が道徳としてその人に自然と顕れることになる。
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道徳に関する出典・逸話・訳・書き下し文
古典関係
道徳に関する古典の参考
- 故に曰く、恬淡寂漠、虚無無為は、此れ天地の平にして道徳の質なり、と。(荘子:荘子-外篇[刻意][2.1])
注釈関係
古典関係の書籍から抽出
- 仁義禮智、之を道徳と謂ふ、人道の本なり。忠信敬恕、之を修為と謂ふ、道徳に至るを求むる所以なり。(伊藤仁斎(維禎)述、佐藤正範校「論語古義」25-26/223 - 伊藤仁斎)
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