程明道とは - 語彙

先頭が「て」の語彙の意味と読み方

程明道(ていめいどう)

中国の北宋時代の儒学者。1032-1085年。
河南洛陽の人で名は顥（こう）、字を伯淳という。
弟の程伊川と共に二程子と呼ばれる。
周濂渓に学び、その影響を受けて誠による感化を旨とした。
程明道は「宇宙の生意とは万物一体の仁、仁とは己とともに人を生かす共存の心」と述べ、人がその天稟たる性の善を発揮するには、心を一にして敬を持して心を修めなければならないと主張した。
その思想は陸象山、王陽明へと受け継がれることになる。
程明道には弟の程伊川の他に二人の兄と二人の弟が居たが皆な幼くして没してしまった。
15歳の時に程伊川と共に周濂渓に従学し、その人物に感動して聖人の道を志し、26歳の時に張横渠や蘇東坡と共に進士に及第して、呂公著の推薦で中允権御史となった。
しかし、後に王安石が執政となって新法を押しすすめるようになると、意見が合わずに中央の舞台から去り、そのまま中央へと戻ることなく病没した。
享年54。
文彦博は衆論を採ってその墓に「大宋明道先生の墓」と表した。
諡は純公、後に孔廟に従祀されて「先儒程子」と称えられた。

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エピソード

程明道は心に敬を持することの重要性を説いた。
彼自身も常に実行しており、文字を書くにも常に敬を失うことなく「某、字を写す時も甚だ敬す。是れ字を好むを要すに非ず。即ち此れ是の学」と述べている。

程明道は聖人の学の要諦を説いて「聖賢は符節を合わしたが如くに同じである。聖人の道を伝えるに非ずして聖人の心を伝え、聖人の心を伝えるに非ずして己の心を伝える。己の心は、聖人の心と異なることは無い。広大無限、万善皆な備わっている。聖人の道を伝えんと欲すれば、この心を拡充するのみ」と述べている。

王安石が執政となって君の信任を得て法令を切り替えようとした時に、程明道は議論せんとした。
王安石がこれに怒ると程明道は「これは天下の事なり。一家の私議に非ず。願はくば公よ、気を平らかにして以てこれを聴け」と云った。
このような程明道にさしもの王安石も愧じて屈し「これは忠信の人なり」と云って称えていたという。

門人の劉立之は程明道を称して「先生に従ふこと三十年、未だ嘗てその忿厲の容を見ず」と述べている。

程明道は王安石の新法に反対したが容れられずに地位を去った。
王安石は新法を押し進めたがうまくいかず、民の生活が苦しくなっていた。
これに関して程明道は「新しき政策に対して余りに甚だしきに過ぎた争いであった。故に今日、このような事態になって、天下を塗炭させてしまったのだ。この罪は新法への反対賛成関係なく受けなければいけない」として相手の非ばかりを批判することはなかった。

窓際に草が茂っていた。
ある人がこれを除こうとした所、程明道は「不可なり。当に遺物の生意を見んと欲するのみ」と言って止めた。

程明道は小魚を数匹養って鑑賞することを楽しみとしていた。
ある人がその理由を問うと「万物自得の意を観んと欲す」と答えた。

年少の頃に周濂渓に学び、後に仏教老荘その他様々な思想に耽溺し、最終的に六経に反りて遂に得るものがあったという。
程明道の思想はこれらを一丸として独自の思想を展開していった。

程明道の学説を評して朱子は「渾淪然として太だ高く、学びし者は看るに難きなり」と言って、知識に由らずしてより悟入的なその学問の捉え難さを述べている。

朱子は程明道と程伊川の双方を尊崇しているが、その学説において採るのは主に程伊川のもので、程明道の学説は「過高なり」として人品高きに居るものでなければ成せぬとした。

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