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先頭が「こ」の語彙の意味と読み方

黄帝内経(こうていだいけい)

中国最古の医書。
「素問」「霊枢」の二部からなる全18巻。
黄帝と名医との問答の形で記されている。
「素問」は陰陽五行思想に基づく自然哲学的な医学論が中心。
「霊枢」は鍼灸の実際的な臨床医学について述べたもの。
「聖人は己病を治さず未病を治し、乱を治さず乱を未然に治す」などと記され、道教にとっても原典の一つになっているなど通常の医学書とは異なる。

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黄帝内経

昔、黄帝在り、生ずるや神霊にして、わかくして能く言ひ、幼くしてととのしたがひ、長じて敦敏とんびんしょうじて天に登る。
すなはち天師に問うて曰く、
余聞く上古じょうこの人、春秋皆な百歳をぎ、而して動作衰えず。
今時こんじの人、年百半ばにして動作皆な衰える者あり、時世じせいことなりしか、人の将に之を失ひしか、と。
岐伯きはく對へて曰く、
上古の人、其の道を知る者なりて、陰陽を法とし、術数に和し、飲食を節する有り、起居に常有りて、妄りに労をさず。
故に能く形をおこしんそなへ、而してことごとく其の天年を終ひ、百歳をすぐるに及びて去る。
今時こんじの人は然らざるなり。
酒を以て漿しょうと為し、妄りを以て常と為し、すいを以てぼうに入り、欲して以て其の精をつくし、もうにして以て其の真を散じ、満つるも持するを知らず、しんの御するをうかがはず、其の心の快きを務めて、生の楽しみに逆らひ、起居に節無く、故に百半ばにして衰えるなり。

はるか昔、黄帝がいた。
生まれた時から神霊なる徳を備え、弱年にして言辞清らか、幼くして内外の調和を為し、長ずるや敦篤にして謹敏、やがて成じて天へと登った。
そして天師に問うて云った。
私はこのように聞き及んでいる。
遥か太古の人々の年齢は皆な百歳を越えるもその動作は衰えることがないと。
然るに今の人々は百半ばにして動作が衰えてしまう。
これは時世が異なる故なのだろうか、それとも人が自ら失っているだけなのであろうか、と。
岐伯が応えて云った。
遥か太古の人々は人が為すべき道というものを知っています。
陰陽を法として世の中の種々形変を受け入れ、飲食を節して起居は規則正しくあり、妄りに何かをするようなことはありません。
だからその心身共に健やかにして皆その天命を尽くすので百歳を越えて去るのです。
今の人々はそうではありません。
酒を飲み物として妄りを常とし、居室においてもうつつを抜かしております。
欲することばかりなのでその精神は渇し、むやみにすり減らすばかりなのでその真を散じ、満ち足りることを知らずに自ら手放し、心を修めることを考えもしません。
如何にも心の楽しみを求めているようで、その実、生の楽しみに逆らっているだけで、起居には節操がまったくありません。
だから百半ばであるにも関わらず衰えてしまうのです。

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語句解説

黄帝(こうてい)
黄帝。軒轅(けんえん)。伝説上の帝王で理想の君主として尊ばれる。文学、農業、医学などの諸文化を創造したとされる。
敦敏(とんびん)
忠実やか(まめやか)。心がこもって誠実なさま。
春秋(しゅんじゅう)
年齢。一年。歳月。
漿(しょう)
細長く糸をひいてたれる液、転じて、飲み物の総称。おもゆ。
酔(すい)
のみつぶれる、うつつをぬかす。この場合は家でうつつを抜かしているの意であろう。
房(ぼう)
部屋。住居。夫婦の寝室。

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