エピクテトス
提要[50]
斯の道を守るは国法を守るが如くあれ。
いやしくも斯の道を離れたら罪業を犯せし如く思え。
世人が汝に就き何を言おうが、顧みてはならぬ。
是は汝に毫も関することでない。
汝は自分が最大の善を有つに価値ありと思うこと、及び何事にも無分別に行動せざること(分別心を傷けざること)を汝は何時まで延ばさんとするのであるか。
汝は汝が身を修むべき教えを聴いた、之を採用した。
汝は今猶ほ如何なる師を得んとするか、而して之を得るまで汝が改善を延ばさんとするのか。
汝は幼年ではない、既に成人である。
汝は何時も自己のことを怠り、無頓着に暮らして行き、延引に延引を加え、志のみあって実行せず、今日より始めん明日より着手せんとのみ思はば、汝は識らず識らず毫も進歩することが出来ずに終生無学で暮らすであろう。
故に汝は完全な人として、進歩する人として生活することの価値ある者と自分を思うが良い。
是が汝に正当のことと思はれたら、之が破るべからざる規則であるようにせなければならぬ。
辛苦恥辱に出遭はば、今が戦闘の時であると思え、オリムピアの競技が此に在るのだ、一刻の猶予も出来ぬと思え。
而して敗北か弛みかは汝が進歩を阻害し、之が反対は之を進歩せしむるものなることを思え。
ソクラテスは理性の外何物にも従はなかった。
彼は万事につけて之をよく守ったが故に完全な人となった。
汝は未だソクラテスではないけれども、ソクラテスたらんことを期する人の如く生活せなければならぬ。
- 出典・参考・引用
- カ-ル・ヒルティ著・平田元吉訳「幸福」60/190
- この項目は「zayuu/zayuu_jinsei/zayuu_jinsei_442.html」に関連付けされています。
<< 前のページ | ランダム | 次のページ >> | |
関連リンク
- エピクテトス
- ローマ期の哲学者。生没年は55-135年とされるが、50-138年という記述…