エピクテトス
提要[45]
或る人が平常より早く沐浴を終えたら、彼は善く沐浴せぬと言ってはならぬ。
只だ彼は早く沐浴したと言え。
或る人が多く酒を飲んだら、彼は行が悪いと言ってはならぬ。
只だ彼は多く飲んだと言え。
何故なれば、汝は彼をして此の行為に出でしめた理由を究めないで、どうして彼の行為の不正であることを断言することが出来るか。
夫れ故に、汝は只だ事件の一部分に就いてのみ明瞭なる観念を有って、他の部分に盲目的に従うことを避けねばならぬ。
現代語訳・抄訳
ある人が平常よりも早く入浴を終えたからといって、彼は善く入浴しなかったと言ってはならない。
ただ、彼は早く入浴したとのみ言え。
ある人が多量の酒を飲んだからといって、彼の行いは悪いと言ってはならない。
ただ、彼は多量の酒を飲んだとのみ言え。
お前は彼がそのような行為に出た根本の理由を講究せずして、どうして彼の行為の不正であることを断言することが出来るのであろうか。
それ故に、お前はただ事件の一部分においてのみ明瞭なる観念を有すだけで、他の部分にまで盲目的に従うことを避けなければならない。
- 出典・参考・引用
- カ-ル・ヒルティ著・平田元吉訳「幸福」58/190
<< 前のページ | ランダム | 次のページ >> | |
関連リンク
- エピクテトス
- ローマ期の哲学者。生没年は55-135年とされるが、50-138年という記述…