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エピクテトス

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提要[2]

汝よく之を思え、欲望は自分が欲するものの獲得を約する。
嫌悪は自分が嫌うものに遭はざらんことを欲する。
而して欲望から欺かれたるものは不幸である、然し自分が嫌ひのものに遭ったものは一層不幸である。
汝じ若し唯だ汝が力の及べる事物に反するものをのみ嫌はば、汝は汝が嫌へるものに遭ふことはないであろう。
然し疾病、死及び貧困の如きものを嫌えば汝は不幸であるであろう。
此の故に汝が力の及ばざるものに対して嫌悪を抱いてはならぬ、而して汝が力の及べる事物の性質に反するもののみに対して嫌悪を有せねばならぬ。
欲望は先づ第一に全く之を制せよ。
そは汝じ若し汝の力の及ばざる物を欲せば、汝は必然の結果として幸福を失ふからである。
そしてまた汝の力の及べるものであって、同時に欲するに適したものは汝は未だ今は知らぬのである。
凡て欲望と嫌悪とに就いては、汝は只だ静かに落ち付いて、或いは之に背き或いは之に向はねばならぬ。

出典・参考・引用
カ-ル・ヒルティ著・平田元吉訳「幸福」32/190
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出典
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備考・解説

ヒルティは注釈に次のように述べている。
是れは初学者に教えたものである。
凡て道に進んで行く初めは自分が実際に有する唯一のもの、即ち、自分の意志を、自由にし而して自分が身を捧げようと思って居るものの為に之を用いるにあるのである。
此の正当な考えがエピクテトスの上の言に含まれているのである。
故に十五世紀の有名なる聖者は直接に言って居る。
「凡て自己の意志は罪である」と。

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エピクテトス
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