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提要[11]

何事につけても「予は之を失った」と言ってはならぬ。
「予は之を返した」と言はなくてはならぬ。
汝の息子が死んだ。
之は返したのである。
汝の財が奪はれた。
之もまた返されたのである。
之を奪った者は悪人であろう。
然し最初の贈呈者が、誰を通じて之を要求しても、汝に於いては同じことであろう。
彼が所有として之を汝に託せし以上は、旅客が其の客舎を見る如くに之を他人の物と見なければならぬ。

出典・参考・引用
カ-ル・ヒルティ著・平田元吉訳「幸福」36/190,エピクテ-ト著・斎木仙酔(延次郎)訳「修養訓」22/105
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