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孔子

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詩経-國風[衛風][淇奧]

淇奥きいくは、武公の徳を美するなり。
文章有り、又た能く其の規諫きかんを聴き、禮を以て自ら防ぐ。
故に能く入りて周に相たれば、美して是の詩を作るなり。
・詩文
いくるに、綠竹りょくちく猗猗いいたり。
たる君子有り、せつするが如くするが如く、たくするが如くするが如し。
しつたりかんたり、かくたりけんたり。
匪たる君子有り、終にわする可からず。
彼の淇の奥を瞻るに、綠竹青青せいせいたり。
匪たる君子有り、充耳じゅうじ琇瑩じゅうえい會弁かいべんは星の如し。
瑟たり僩たり、赫たり咺たり。
匪たる君子有り、終に諼る可からず。
彼の淇の奥を瞻るに、綠竹せきの如し。
匪たる君子有り、金の如くすずの如く圭の如くへきの如し
寛たりしゃくたり、ああ重較ちょうかくたり。
善く戲謔ぎぎゃくすれども、虐を為したまはず。

現代語訳・抄訳

・詩序
淇奥は、衛の武公の徳を讃えた詩である。
武公は内より滲み出る威儀がありて、よく諫めを聴き、禮を以て自らを律する明君であった。
故にその治世たるや民は安んずることができ、それを嘉して是の詩を作ったのである。
・詩文
あの淇の川の奥まったところを見てみれば、緑に映えた竹がなんとも美しく繁っている。
その竹の如くに美なる徳を有した君子が居る、その人となりは切磋琢磨して自らを磨き上げてやまない。
厳にして寛大なり、明にして威儀あり。
斯様な君子が及ぼせし徳は、いつまでも忘れられることはないであろう。
あの淇の川の奥まったところを見てみれば、緑に映えた竹が盛んに繁っている。
その竹の如くに盛なる徳を有した君子が居る、その人となりはかの服飾の如くに威厳ありて麗しき徳で溢れている。
厳にして寛大なり、明にして威儀あり。
斯様な君子が及ぼせし徳は、いつまでも忘れられることはないであろう。
あの淇の川の奥まったところを見てみれば、緑に映えた竹の勢いたるや至れり。
その竹の如くに至れし徳を有した君子が居る、その人となりは精純にして自ずと温潤たり。
その心意は宏大にして皆と和するに至る、ああ、その車するは卿士の車なり。
善く親しまれしも、禮に背くなし。

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出典
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語句解説

淇奥(きいく)
淇水のくま。淇水が岸に入り込んだ部分。淇水は淇県にある川の名。
武公(ぶこう)
武公。衛の僖公の子で衛11代目君主。衛の祖である康叔の政治を目標として善政を布いたという。
文章(ぶんしょう)
威儀のあること。禮や楽などの文化の中心となるもの。
規諫(きかん)
戒め。ただし諫めること。
奥(いく)
澳。川の流れの曲がりくぼんだよどみのことで、隈のこと。
猗猗(いい)
草木が美しく盛んな様。
磋(さ)
玉石や象牙などをみがくこと。不揃いなものを磨くことをいう。
琢(たく)
うちたたく意をもつ。玉を打ち磨くこと。
瑟(しつ)
厳かなさま。こまやかな様。あざやかな様。
赫赫(かくかく)
かがやかしく盛んな様。あかあかと光輝く様。
咺(けん)
ゆたかで威儀のある様。
充耳(じゅうじ)
耳の飾り玉。
琇瑩(じゅうえい)
美しい石。宝石のこと。
会弁(かいべん)
縫い目に玉飾りを加えた鹿の皮の冠。
簀(せき)
細小ものを連ね重ねる意をもつ。この場合は密に繁る様。
金の如く錫の如く(きんのごとくすずのごとく)
雑駁なくよく練れていることを喩える。其の鍛錬の精純なるをいう。
圭の如く璧の如し(けいのごとくへきのごとし)
練りきれてすっきりとして美しき様を喩える。其の生質の温潤なるをいう。
綽(しゃく)
ゆるやか。しとやか。ゆたか。
重較(ちょうかく)
卿士の車。
戲謔(ぎぎゃく)
どちらもたわむれる意の字で、人と戯れることをいう。
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