礼記-祭義[5]
原文
唯聖人為能饗帝。孝子為能饗親。饗者郷也。郷之然後能饗焉。是故孝子臨尸而不怍。君牽牲。夫人奠盎。君獻尸。夫人薦豆。卿大夫相君。命婦相夫人。齊齊乎其敬也,愉愉乎其忠也。勿勿諸其欲其饗之也。
書き下し文
唯だ聖人にして能く
之に
君は
現代語訳・抄訳
ただ聖人のみが上帝を
対座するや孝子の誠心は祖霊の心に適う。
故に祖霊は降下して供え物を
この故に孝子は
祭祀するに君主は
そして
厳粛にこれを敬い、和らぎ安んじて心を尽くし、祖霊の来たるを今か今かと待ちわびるのである。
- 出典・参考・引用
- 塚本哲三著「漢文叢書第17」258/360,早稲田大学編輯部編「漢籍国字解全書」第27巻192-193/330
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備考・解説
饗はもてなすこと。
郷は食器の左右に対座する人を示したもの。
卿は饗宴にあずかる者。
豆は食料の豆を指すのではなく、おそらくは供え物すべてをいう。
豆は儀礼に用いる器のことで、祭器の意。
またそなえものの意がある。
語句解説
- 尸主(ししゅ)
- かたしろになること。尸は神像、位牌、またなきがら、むくろの意。古代において祖の尸主に孫を当てて神霊の寄る所とし、その前に供え物を置いて祭ったという。後に人形で代替するようになった。
- 盎(おう)
- おう。はち、ほとぎ。みちあふれること。盛大。
- 奠(てん)
- てん、でん、てい。そなえる、まつる、さだめる。供え物をする。定めおく。すすめる、ならべる。多く神事、神意に準ず。
- 卿大夫士(けいたいふし)
- 家臣の三つの身分を卿大夫士という。上大夫(卿)、大夫、士で、卿は執政の大臣・高位者、大夫は部課の長、士は役人・下級官吏。
- 命婦(めいふ)
- 宮中に仕える婦人。また、大夫の妻。
- 斉斉(せいせい)
- つつしむ形容。整っている様。斉はつつしむ、おごそかの意。
- 愉愉(ゆゆ)
- 和やかな様。なんのしこりもなく喜ぶ様。くつろぐたのしさ。愉は心安らぐ意。
- 勿勿(ふつふつ)
- つとめること。いそぐ様。あわただしいこと。
- 上帝(じょうてい)
- 天上にあって万物を支配する神。大自然の神意。
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- *1勿勿諸の諸は語末につけて形容の語を作る。