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朱熹

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小学-外篇[善行第六][55]

劉寛、倉卒そうそつに居ると雖も、未だ嘗て疾言遽色なし。
夫人寛を試みていからしめんと欲し、朝会に当り装厳そうげんすでにおわるを伺いて、侍婢をして肉羹にくこうを奉じてひるがえし朝服を汚さしむ。
にわかに之を収む。
寛、神色異ならず。
乃ちおもむろに言ひて曰く、
羹、汝が手をただらすか、と。
其の性度此の如し。

現代語訳・抄訳

劉寛はどのようなときも疾言遽色の姿を見せたことがなかった。
ある時、夫人がそのような劉寛を怒らせてみたくなり、朝会の身支度が整って出仕する所を見計らって下女に肉羹を持たせ、それをぶちまけさせて朝服を汚させた。
下女がうろたえてすぐに片付けようとした所、劉寛は心も顔色も常と異なることなく徐に云った。
羹でお前は手を火傷してはいないか、と。
その度量はこれほどまでに寛容であったという。

出典・参考・引用
朱晦庵著・棚橋絢子評釈「小学大全」130-131
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出典
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語句解説

倉卒(そうそつ)
あわただしい様。にわかに、急遽に。
装厳(そうげん)
いかめしく身支度すること。
肉羹(にくこう)
肉類を入れてつくったあつもの。肉の汁物。
神色(しんしょく)
精神と顔色のこと。態度。
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