酔古堂剣掃-法部[97]
原文
有一念而犯鬼神之禁。一言而傷天地之和。一事而醸子孫之禍者。最宜切戒。
書き下し文
一念にして
最も宜しく切に戒むべし。
現代語訳・抄訳
一時の思いで先祖の禁戒を犯し、一言にして天地の和を破り、一事にして子孫に禍を遺す者あり。
最も戒めるべきところである。
- 出典・参考・引用
- 塚本哲三編「酔古堂劒掃・菜根譚」214/315,笹川臨風(種郎)校「酔古堂剣掃訳註」343/385
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備考・解説
鬼神は諸生万物の霊魂のようなもの。
礼記には「死して身は地に還り、気は天に昇る」とある。
必ずしも先祖の霊魂のみを指すのみではないが、人において最も近しく大切にするものは先祖であるが故に、ここでは先祖の鬼神とした。
禁戒は先祖が遺した教え、教戒、守るべきところ。
徳川家康曰く「先祖の仕置を我儘に改むるは不孝の至りなり」と。
守るべきを守って継いでゆくは子の務めである。
天地の和はそうであるべきところ。
自然は「自ずから然る」ものであり、熊沢蕃山は「天地の大徳を生といい、人は天地の心を以て心とす」と述べる。
調和は生の基本であり、これを破るは自らを失うものである。
子孫の禍を醸すは、富業の誘いを断りたる楊震の故事に曰く「清廉なる官吏の子孫として称せしめ、その名を以て遺す、これに勝るものはない」と。
驕れる者は久しからず、盛者必衰の理は節なくして過ぎたるに由るのみ。
先祖を継ぎ、子孫に至らばこれを孝の至極という。
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