孝経[紀孝行]
原文
孝子之事親也。居則致其敬。養則致其樂。病則致其憂。喪則致其哀。祭則致其嚴。五者備矣。然後能事其親。事親者,居上不驕。為下不亂。在醜不爭。居上而驕則亡。為下而亂則刑。在醜而爭則兵。三者不除。雖日用三牲之養。猶為不孝也。
書き下し文
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孝子の親に
五者、備はり、然る後に能く其の親に
親に事ふる者は、
三者、除かざれば、
現代語訳・抄訳
孝子の親に
故にこの五者を備えてはじめて、その親に事えるという。
親に事える者は、上に在りて驕ることなく、下に在りて乱すことなく、衆と在りて争い生ぜず、必ず和して皆な親しむ。
もし上に在りて驕らば亡び、下に在りて
故にこの三者を除かざれば、日々に三牲の養いを以てその親に尽くすと雖も、不孝という。
- 出典・参考・引用
- 中江藤樹訳、熊沢蕃山(伯継)述「孝経」50-54/88
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備考・解説
孝経第一声に曰く、「身體髪膚、之れを父母に受く、敢へて毀傷せざるは、孝の始なり」と。
三牲の養いを以て親を養うも不孝なる所以はここに尽く。
孝道は天道なり、その身を生じて全うせざれば、これ不孝の至りというべし。
注釈
- 黄石斎
- 五の致るは、赤子の知能、学問を
假 らず、而して学問の大なる、人の尽くす能はざる所あり。
故に言ふ、良知を致すと。
良知を致すの説、則ち此に出づるなり。
仁義禮知信、則ち皆な此れより始む。(黄石斎) - 中江藤樹
- 上とは位高く、年老い、才徳に長じたるものを謂ふなり。
唯だ天子諸侯の位とのみ看るべからず。
匹夫と雖も上に居るの時あり、妻子に交はる是なり。
最も宜しく驕の字を活看 すべし、心の上に就きて看るべし。
下これに倣へ。(中江藤樹) - 大塩中斎
- 驕らず乱れず争はず、皆な五致の上より
礱磨 して来る、亡や、刑や、兵や、全く五致を知らざるにあり、五致を知るを要す。
一言以て之を蔽へば、止まるを知るにあるのみ。(大塩中斎)
関連リンク
- 三牲の養い
- 親にご馳走することで、転じて親孝行の意。三牲とは牛・羊・豕しを意…