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熊沢蕃山
孝経小解-事君[1]
君子は孝子なり、孝子の賢なるもの人臣と成りて、其の君に事ふるなり。
心を尽くすを忠といふ、君前に進んでは、君を賢君とし、政は仁政ならんことを欲す。
善あれば君に譲り、君前を退ひては、君の命令、過ちあれば己が過ちとす。
補ふは隠して非を飾るにあらず、己が過ちとすれば、あらはして、すみやかに改むるなり、則ち衆の過ちを改むる師たり。
君言、善なれども、いまだ全からざる事あれば、これを補ひ、かけたる事あれば増益す。
士、朝に業を受け、昼日講じ行ひ、夕べに復思し、夜に過ちを計るといへり。
忠臣の君に事ふるは、親に事ふるがごとし。
家に居ては孝子なり、国に出でては忠臣たり。
君、善の兆しあれば、是を助けて遂げしめ、命令、出づれば導いて其の善を大にす。
君、過悪の兆しあれば、是を未発に正す、もし事にあらはるれば、是を救ひて其の事やむ。
善美は君に帰し、過悪は己に帰す、故に君、忠臣の誠を感じ、其の諌めに順従し、道義によりて上下親しむ、故によく相ひ親しむなり。
小雅、隰桑の篇の詩なり。
忠臣、親を愛する誠をうつして、君に事ふるゆえに、君を大切に思ふ心を以て心とす、上下、貴賤を以て心とせず、近く父母を思ふがごとし。
中心に蔵めて忘るる事なし、これ進みて忠を尽くさんことを思ひ、退きて過を補はんことを思ひ、其の美を将順し、其の悪を匡救す、純忠の本なり。
- 出典・参考・引用
- 中江藤樹訳、熊沢蕃山(伯継)述「孝経」69-70/88
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語句解説
- 将順(しょうじゅん)
- その通りに従うこと。受けて従う。奨順。
- 匡救(きょうきゅう)
- ただし救うこと。匡は正す意。
関連リンク
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