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熊沢蕃山
孝経小解-閨門[1]
閨門は小門なり、一家の小門の内と雖も、一国の礼備はれり。
厳父は君に事ふるの道、厳兄は長に事ふるの礼なり。
妻子は百官のごとく、臣妾は徒役のごとし。
慈は衆を使ふ所なり、慈は恵み厚うして愛に流れず、おとなしき心なり、父の道なれば、民の父母たる徳なり。
妻子は家内の貴きものなれば、百官のごとし、臣妾は家内のいやしきものなれば、徒役のごとし。
此の百姓は百官なり、徒役は庶人の官に在る者なり。
士も中士以上には、家内の人、品々あり、侍、下人段々数あり、女にも上中下品々あり、男女の召使をなべて臣妾といへり。
妻子は恩に狎れ、愛を恃みて、奢り易し、主人、慈厚うして礼儀正しき時は、和して奢らず。
臣妾は遠ければ、おろそかにて恨み易し、主人、恵み細かにして、其の所を得せしむれば、中心悦んで服従す。
是れ則ち、妻子を斉ふるは百官を理むるの道、臣妾を御するは徒役を使ふ道なり。
- 出典・参考・引用
- 中江藤樹訳、熊沢蕃山(伯継)述「孝経」65-66/88
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語句解説
- 閨門(けいもん)
- 内室の門。寝室の出入り口。宮中の小門。
- 臣妾(しんしょう)
- 召使い。人に服従する者。
- 徒役(とえき)
- 使用人。人夫として使われる者。労役に服する者。
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