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熊沢蕃山
孝経小解-廣揚名[1]
一人の人なり、親に対しては子なり、子に対しては親なり、君に対すれば臣なり、臣に対すれば君なり、兄に対すれば弟なり、弟に対すれば兄なり。
職位、己が上に在る人は長なり、己が下に在る人に対すれば、己長なり。
家に居て、家道をつかさどり、朝に事へて国政をあづかる、皆な一人なり。
故に親に事へて愛敬の誠あれば、君に事へて敬忠なり、兄に事へて弟なれば、長に事へて順なり、家に居て家人に慈恵あれば、国に出でて仁政を行はる。
皆な二心なく二道なし。
中江氏云はく、
理は物その理を得て、乱れざるを謂ふなり。
治も亦た理なり。
家に居るの理とは家人を斉へて、各其の理を得て、紊れざるを謂ふなり。
治は官政其の理を得て紊れざるを謂ふ。
理と曰ひ治と曰ふ、皆な孝中の一徳なり、と。
行は、孝弟理の行なり、内は心なり。
移す可き実心になりて、身に施し外に顕れ、名を後世に立つなり。
名は、君子の求むる所に非ざれども、名は実の賓なり。
其の実あるものは、必ず其の名あり。
世を没るまで名の称せられざるは、終身の実なければなり。
ここを以て君子これを疾めり。
もしその名の称せられざるを疾まば、其の実の立たざることをおそれて、つねに孜孜として、勉めて善を為すべしといへり。
- 出典・参考・引用
- 中江藤樹訳、熊沢蕃山(伯継)述「孝経」64-65/88
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語句解説
- 孜孜(しし)
- つとめ励むこと。飽きることなく努力すること。
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