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熊沢蕃山

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孝経小解-廣至徳[1]

天子いまだ太子たる時、至孝しこうの道を身に行ひ給ふは、父帝、則ち君なれば、忠教ちゅうきょうの道を尽くし給ふなり。
大臣のよわい、徳長ぜる人と相ひ譲り給ふは、弟順ていじゅんの道にしたがひたまふなり。
是れ太子の身、孝、忠、ていの道をかね給ふは、天下の教への本なり。
生まれながら太子、東宮とうぐうなどとあがめ、すへられ給へば、後世の武家の若君のごとくにて、此の道を行ふ給ふ事あたはず、二つの日あるがごとし。
君自ら行ひ給はでは、徳の流行なければ、郷里の師、家毎にいたり、日々に見て、教ふと雖も、風化の道にしかず。
風化の徳ありて後、大学、小学あり。
郷里は師ありて孝道を教ふるは、天下の、人の父たる者を敬する道なり。
忠道を教ふるは、天下の、人の君たる者を敬する道なり。
弟道ていどうを教ふるは、天下の、人の兄たる者を敬する道なり。

出典・参考・引用
中江藤樹訳、熊沢蕃山(伯継)述「孝経」60/88
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