熊沢蕃山
孝経小解-五刑[2]
平清盛が日本国を
君は、臣の命を受くる所なれども、臣の威つよきゆえに臣の望み、半ば、君の御心にかなはざれども、是非なく求めにしたがへるなり。
是れ、臣の心に上とする心なきなり。
人皆な我が身を賤しむる事を厭ひて、心を賤しむる事を厭はず。
身の尊からん事を欲して、心の尊からん事を欲せず。
もし心のいやしきことを厭はば、聖人を師とせざれば尊からず、
然るに聖人を
世俗も礼儀を知らざる者を、無法なる者といへり。
礼儀は聖人によりて知る所なり。
故に心の師をそしる者は、心に礼儀の法なし。
礼儀をなみする者は人にあらず。
必ずしも、口に孝道をそしらざれども、愛敬の心うすき者は、孝をそしり親をなみするなり。
人必ず親有りて以て生じ、君有りて以て安んじ、法有りて以て治まり、而る後に人道滅びず、国家乱れず。
若し三者皆な無くんば、豈に大乱の道に非ずや、と。
正義に云はく、
人、君に忠ならず、聖に法あらず、親を愛せず、是れ皆な不孝と為す、乃ち是れ罪悪の極み、と。
董氏曰く、
三者又た不孝を以て首と為す、蓋し孝は則ち必ず君に忠たり、必ず聖人の法を畏る、と。
夫れ人、愛敬の心うすきは、君としても臣としても、父子、
虎狼の
大乱のよりて出づる所なり。
故に大乱の道なりとのたまへり。
- 出典・参考・引用
- 中江藤樹訳、熊沢蕃山(伯継)述「孝経」55-56/88
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