熊沢蕃山
孝経小解-紀孝行[3]
此の節は、親に事ふる本は、身を守るにある事をのたまへり。
上は、王、侯、卿大夫、其の外奉行職にて、民の上に居る者を兼ね、年長じ、才知まさりたるも上なり。
大君は天下の五穀、財用を天下の為に用ひ、諸侯は一国の五穀、財用を、国人の為に用ひて、上の好む事に、費やさざるを、上に居て驕らずといふ。
是れ大君、諸侯の孝の本なり。
禄を受けて
時節を以て、反逆の乱もなすべし。
弱は強に敵すべからず、少は多に敵すべからざるは、天に
況や君臣、上下をや。
君、君たらずとも、臣は臣たり。
国法、可にあたらず共、其の国に居ては、そむかざるを乱れずといふなり。
唯だ、位上下のみならず、老いたる人には順従にしてあなどらず、才知ある人には、随って教へを受く、芸能にまさりたるをば師とす。
是れ又た下として乱れざるなり。