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熊沢蕃山

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孝経小解-紀孝行[1]

五つの孝の事を、のたまはんために、端を発し給へり。

居るは、父母をはなれて居るなり、到るは尽すの如し。
推して其の極みに至るなりといへり。
子の身は、父母の分身、遺體なり。
身をけがしそこなふは、父母をけがすなり。
故に父母をはなれ、遺體を奉じて居るときは、全體の精神、敬に専らなり。
敬の至りは慎独しんどくなり。
己れ独り知るところを慎むときは、内外一致にして敬せずといふ事なし。
我が心にかへりみて恥じる事なきを君子といふ。
故に君子にあらざれば、孝の至りにあらず。

父母老いて、子養ふ時、よろづ父母の心に叶はん事を欲す。
冬はあたたかに、夏はすずしく、飲食口腹こうふくに応ぜん事を欲し、七十は肉に非ざれば飽かず、人生禄有る、親白頭はくとうなれば、何ぞ能く一日いちじつ甘饌かんせん無からんやといへり。
四時の佳興かきょうに随って、月花にも心をなぐさめん事を欲す、親の心に叶ふを以て、子の楽しみとす、故に愉色ゆしょく婉容えんようあり。
是れ口體こうたいを養ふの二三なり。
父母の志を養はざれば、其の楽しみを致すとは、いひがたし。
父母、仁慈の志あれば、是を助けて大にし、父母、義理の志あれば、是を感じて遂げしむ。
父母、道を行ふ事をたのしむは、孝の至りなり。
其の楽しみを致すと云ふべし。

出典・参考・引用
中江藤樹訳、熊沢蕃山(伯継)述「孝経」50-51/88
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語句解説

甘饌(かんせん)
甘い食べ物を供えること。
愉色(ゆしょく)
喜ぶ顔色。楽しい様子。
婉容(えんよう)
美しい姿。柔和な容姿。穏やかな様。
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