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熊沢蕃山

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孝経小解-聖治[1]

聖人の盛徳の名、神明不測の号なり。
時にしたがって大業を立て、天地と其の徳を合せ、日月と其の明を合せ、鬼神と其の吉凶を合せ、四時と其の序を合せ、天に先達って行ふときは、天地鬼神も聖人にたがはず、天に後れて行ふときは、聖人また天の時を奉ず。
聖人と雖も、五尺の身、方寸ほうすん心舎しんしゃは、衆人と同じ。
然るに大虚寥廓りょうかくの神道と、互ひに先後を為すほどの広大の徳なれば、孝道大なりと雖も、加はることあらんやとなり。

性は天地生々の心なり。
いまだ形あらざる時は、唯だ生々の理のみなり、声もなくしゅうもなし。
是を人生まれて静かなるは、天の性なりといへり。
静は寂然せきぜん、不動の謂ひなり。
すでに形ありて後、是を性と云ひ、又た本心とも云ふなり。
天地の生ずる所、人を貴しとする者は、陰陽五行の秀気しゅうきにして、五行の神霊、全く照らせり。
是を明徳と云ふ。
五行の神霊は仁義礼智信なり、明徳の條理なり。
他の万物、此の性にあらず、故に人は天地の性とも心ともいへり。
天地の間に人のあるは、人の心にあるがごとし。
万物は造化の人を生ずる糟粕そうはくなり。
この故に万物には、神霊の照なし、ただ血気の生あるのみ。
かるが故に人は、万物の霊とも長ともいへり。
天地の徳なり。

出典・参考・引用
中江藤樹訳、熊沢蕃山(伯継)述「孝経」39-40/88
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語句解説

寥廓(りょうかく)
ひろびろとして大きいこと。広大でむなしいこと。度量の広いこと。
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