- 熊沢蕃山 >
- 孝経小解 >
- 聖治 >
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
熊沢蕃山
孝経小解-聖治[1]
聖人の盛徳の名、神明不測の号なり。
時に順て大業を立て、天地と其の徳を合せ、日月と其の明を合せ、鬼神と其の吉凶を合せ、四時と其の序を合せ、天に先達って行ふときは、天地鬼神も聖人にたがはず、天に後れて行ふときは、聖人また天の時を奉ず。
聖人と雖も、五尺の身、方寸の心舎は、衆人と同じ。
然るに大虚寥廓の神道と、互ひに先後を為すほどの広大の徳なれば、孝道大なりと雖も、加はることあらんやとなり。
性は天地生々の心なり。
いまだ形あらざる時は、唯だ生々の理のみなり、声もなく臭もなし。
是を人生まれて静かなるは、天の性なりといへり。
静は寂然、不動の謂ひなり。
すでに形ありて後、是を性と云ひ、又た本心とも云ふなり。
天地の生ずる所、人を貴しとする者は、陰陽五行の秀気にして、五行の神霊、全く照らせり。
是を明徳と云ふ。
五行の神霊は仁義礼智信なり、明徳の條理なり。
他の万物、此の性にあらず、故に人は天地の性とも心ともいへり。
天地の間に人のあるは、人の心にあるがごとし。
万物は造化の人を生ずる糟粕なり。
この故に万物には、神霊の照なし、ただ血気の生あるのみ。
かるが故に人は、万物の霊とも長ともいへり。
天地の徳なり。
- 出典・参考・引用
- 中江藤樹訳、熊沢蕃山(伯継)述「孝経」39-40/88
- 関連タグ
- 孝経小解
- 熊沢蕃山
- 古典
語句解説
- 寥廓(りょうかく)
- ひろびろとして大きいこと。広大でむなしいこと。度量の広いこと。
関連リンク
- 聖人
- 人格高潔で生き方において人々を感化させ模範となるような人物。過去…
- 天
- 狭義では空の上の天上。思想としては世界を統べる法則そのもの。不変…
- 条理
- 物事の道理、筋道のこと。条は本来は「條」と書き、攸+木より成る。…
- 造化
- 万物生成、創造変化。無限の進歩向上。創造し化すること。列子の周穆…
Page Top