1. 熊沢蕃山 >
  2. 孝経小解 >
  3. 孝治 >
  4. 1
  5. 2
  6. 3
  7. 4
  8. 5

熊沢蕃山

このエントリーをはてなブックマークに追加

孝経小解-孝治[4]

災害は天より降し生ずる戒めなり。
日月の変、長雨、洪水、ひでり、大風、地震、霹靂へきれき疫疾えきしつなどなり。
天道は常なり、災害は変なり、変は人心の乖戻かいれい怨思えんし淫行いんこう等、天地の気に感じて生ず。
明王の孝治こうちによりて、人道、礼儀正しく、雅楽行なわれて和すれば、天地の気も常に帰して災害生ぜざるなり。
禍乱は人よりなれり。
教へなく道行はざれば、人、利欲を事として、仁義を尊ばず。
利による時は、主従、父子、兄弟、伯父甥の親しきも、欲の心より口論出来しゅったい争訟そうしょうす、況や其の外をや。
かくのごとき類いを人禍といふ。
甚だしければ、匹夫は喧嘩して兵刃へいじんに及び、大身たいしんは君臣、父子、兄弟、伯父甥、合戦に及ぶ、況や他人をや。
其の外、人の物を盗みとり、人の妻子をおかし、追いはぎ、強盗などの人を殺すは、皆な人禍なり。
今、明王の政教平らかにして、人、仁義を尊びて利欲を忘るる故に、口論、争訟そうしょうの事なし、況や乱をや。
故に禍乱おこらず。
明王、上より忠あれとの教へはなけれども、孝の教へによりて、家ごとに孝子たれば、天気和し、人気じんき平らかにして、災害禍乱なし。
是れ国皆な忠臣となりたるなり。
天地人の気、大いに和して清明なる時は、鳳凰来儀らいぎし麒麟出づ、龜龍きりゅう、霊あり。
かくのごとくの至極の治は、孝よりなることを知り給ふ所、明王の知なり、天地、易簡の善を得て、至徳の配する所なり。
彼の高明、広大、玄妙深遠の理を説ひて、大道といふ者は、すべて小道なり、孝道の問学による一事のみ。

出典・参考・引用
中江藤樹訳、熊沢蕃山(伯継)述「孝経」37-38/88
関連タグ
孝経小解
熊沢蕃山
古典
<<  前のページ  |   ランダム   |  次のページ  >>

語句解説

霹靂(へきれき)
はげしい雷鳴のこと。
乖戻(かいれい)
もとる。食い違うこと。ちぐはぐなこと。
兵刃(へいじん)
武器。武器である刃物。やいば。また、戦争の意に用いる場合もある。
来儀(らいぎ)
瑞祥が来たること。鳳凰が偉大な姿で現れることを意味し、人が来ることの尊敬語としても用いられる。
<<  前のページ  |   ランダム   |  次のページ  >>


Page Top