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熊沢蕃山
孝経小解-三才[5]
人道は禮あるを以て尊く、禮によりて乱れず、故に無禮を恥とし、禮楽を知る時は、戒めざれども禮譲の風俗と成りて刑罰を用いずして治まるものなり。
禮に、吉、凶、軍、賓、賀の五つあり。
吉は祭禮なり、凶は喪禮なり、軍は軍法なり、賓は主客往来、交接の禮なり、賀は冠婚の禮なり。
日用常行、五倫の交わり禮に非ずと云ふ事なし。
楽に八音あり、今、残りたるは、絲には箏、琵琶、和琴、竹には笙、笛、篳篥、打物には大鼓、鞨鼓、鐘鼓なり、神楽には本末の拍子に木もあるなり。
古は楽章あり、今は絶えれば声ばかりありて言葉なし。
中夏にも、後世は声ありて言葉なき楽あり。
楽章なけれども、絃の呂、商、角、徴、羽の五声に能く合ひて、音律を吹くごとし。
笙、笛、篳篥の譜を唱歌すれば、俗の、うたひものなどよりは、あくことなく、おもしろきものなり。
人は動物なり。
善に動かざれば悪に動き、雅に吟咏せざれば淫に歌詠す。
是を以て先王、禮に動かし、楽に歌舞せしめ、邪穢を蕩滌して、徳に入らしめんとなり。
故に徳に導くに禮楽を以てせり。
禮の本は敬なり、楽の本は和なり、故あって和す、是れ、道徳の親しみなり。
故に和睦す。
- 出典・参考・引用
- 中江藤樹訳、熊沢蕃山(伯継)述「孝経」30-31/88
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語句解説
- 邪穢(じゃわい)
- 邪悪に穢(けが)れること。
- 篳篥(ひちりき)
- 竹製の縦笛で雅楽の管楽器の一つ。哀調を帯びるという。
- 蕩滌(とうでき)
- 洗いのぞく。洗い流して清めること。
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