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熊沢蕃山

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孝経小解-三才[2]

天の行なふこと健なり。
君子以て自らつとめて已まず、是これに則るなり。
天地を師とすといへども、道、本より人に固有す。
天地の経義を見て、固有の性をひらくる、民の行なり。
民是に之れ則る等の民の字を見て、民は、土民、百姓のみにあらざる事を知るべし。
今を以て見れば、人の字の意にて、貴賤をかねたり。

天はを以て知なり、地はかんを以てのうなり、易簡いかんにして至善なり、禮儀立てて無事なり。
民、日々に善に移りて、自ら知らず、家ごとに孝子、国、皆な忠臣たり。
五典、十義、其の中に行はる、是れ大順だいじゅんなり。
明は天の知なり、天をみれば四象ししょうのみ。
四象は、じつげつせいしんなり。
是れ、天は悠遠ゆうえんなれどもなるが故に、大始たいしを知る。
高明こうめいにして萬物を覆育ふくいくす。
日月じつげつ、地を去ること一萬五千里にして、能く、下土かど照臨しょうりんす。
覆育ふくいく照臨しょうりんは高明の徳なり、大君、是に則りて位高しと雖も、能く人民を親しみて人情、事変を知り、下を親しむ、大君の徳なり。
利は他の禍なり、義より生ず。
故に国を治むる道は、義を以て利とし、利を以て利とせず。
地を見れば四化しかのみ。
四化はすいせきなり。
是れ、地は博厚はくこうなれどもかんなるが故に、生物きはまりなし、大君これに則り、済度さいど利生りしょうの道あり。
済度さいど利生りしょうの道は、富有ふゆう、大業なり。
富有ふゆう、大業をなす者は人才なり。
故に王者の、天地の造化を助ける道は、賢才をあぐるより先なるはなし。
順にするは、天、生じ、地、成り、人、裁制して、各々その所を得せしむるなり。

天地易簡の善を用いて行なふ故に、其の教へやすく、そのせいしたがひやすし。
知り易き時は親しみあり、故にしゅくならずして成り、随ひやすき時は功あり、故に厳ならずして治まるなり。

出典・参考・引用
中江藤樹訳、熊沢蕃山(伯継)述「孝経」27-29/88
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語句解説

覆育(ふくいく)
天地が万物を守り育てること。覆い育てること。かばい育てること。
下土(かど)
大地。下界。国土。また、世の中。
照臨(しょうりん)
四方を照らすこと。天下をおさめること。また、貴人の訪問をあらわす尊敬語に用いられる。
博厚(はっこう)
てあつい。幅もひろく、厚みもあること。
済度(さいど)
済は救う、度はわたす。苦境から救い助けること。仏教用語で迷いの世界から教導して悟りに至らせること。
利生(りしょう)
仏が人々を救済して悟りの境地に導くこと。恵み。
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