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孫武

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孫子-虚実[3]

進みてふせぐ可からざる者は、其の虚をけばなり、退きて追ふ可からざる者は、速やかにして及ぶ可からざればなり。
故に我れ戦はんと欲せば、敵の塁を高くし溝を深くすと雖も、我と戦はざるを得ざる者は、其の必ず救ふ所を攻むればなり、我れ戦ひを欲せざれば、地にして之を守ると雖も、敵の我と戦ふを得ざる者は、其のく所にそむけばなり。

現代語訳・抄訳

進むところ敵無きは、その虚をくからであり、退くところ敵の至らざるは、速やかにして去るからである。
故に自分が戦いを欲すれば、敵がいかなる堅固の地に守ろうとも戦うに至るは、急所を衝きて出でざるを得ぬようにするからであり、自分が戦いを欲せざれば、たとえ地に線を描いて之を守るが如きであっても戦うに至らざるは、敵の不意に出でて応ずるを得させぬからである。

出典・参考・引用
山鹿素行注・解「孫子諺義」95/183
関連タグ
孫子
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古典
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備考・解説

山鹿素行曰く、
我れ戦ふことを欲するにおいては、彼れ城を堅くして守り必ず出でざるが如きも戦わざることを得ざるに至る、其の故は其の必ず救ふ所を攻むるなり。
其の救ふ所と云ふは、彼が救わずしては叶わざるの処を指す。
或ひは彼が主君の城地を侵し、其の巣穴をつなり、或ひは彼が人質妻子のある地をおびやかし、或ひは其の与力し助長すべき方を攻め、或ひは糧道往来の地をふせぎ、或ひは其の倉庫たくわえあるの地を攻め、或ひは刈田乱妨し、地下を追捕するの類、皆な其の必ず救ふ所を攻むるなり。
此の如きの要地を、かすめおびやかせば、彼れ我と戦はざるを得ざるなり。
地をすとは、地に筋を引きて是より外へ出るべからずと限をなすことなり。
或ひは此の所より外へは出るべからずなどと限る、皆な地にすなり、至りて軽粗の義なり、上文高塁深溝のうらなり、甚だ破り易く攻め易きの體をいへり。
乖は違なり。
云ふ心は、我れ戦ふを欲せざるときは、堅固の地形を守りて出でざると云ふに及ばず、地に筋を引きて其の限れる処を守りても、彼ついに攻めるを得ず戦ふを得ず、その故は其のく所に乖むけばなり。
其のく所に乖むくとは、彼の致す処、皆な彼の不意に出づるなり。
く所とは其の思慮する所を云ふなり。
旧説多く以て敵人往く所の路を乖謬かいびゅうするなりと、是れ又た不意を打つの一端なり。
李筌注に、乖は異なり、奇異を設けて之を疑はすと。
是れ又た正解に非ざるなり。
乖は其の不意に出でて彼の設くる所に乖むくなり、と。

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