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孫武

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孫子-作戦[4]

故に兵は勝つを貴びて久しきを貴ばず。
故に兵を知るの将は、民の司命、国家安危の主なり。

現代語訳・抄訳

故に兵事というのは勝つことを貴びて、久しきを貴ばず。
故に兵法を知るの将軍は、人民の生死を司り、国家の存亡を握る者というのである。

出典・参考・引用
山鹿素行注・解「孫子諺義」48-49/183
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備考・解説

大全に曰く、
速を貴ぶと曰はずして、勝を貴ぶと曰ふ字を下すは極めて斟酌しんしゃく有り。
速にして勝たずんば、何ぞ速を貴ばん。
惟だ速にして能く勝つ、此れ貴ぶに足る所以なり。
久しきを貴ぶに足らざるが若きは、又た何ぞ言ふを待たんや、と。
六韜に云ふ、
兵は国の大事、存亡の道、命は将に在り、と。
三略に云ふ、
将は国の命なり、と。
太公に又た曰く、
将は人の司命なり、と。
大全に云はく、
民字に醒見せいけんを要す。
軍中一切の糧草用費、皆な民命の関する所、し師老に財とぼしくば、民、何を以て堪へん。
将、能く速勝を知らば、則ち民命の全きを得、豈に司命に非ずや、と。
又た云はく、
師を興し衆を動す、すでに是れ民を労し財をいたむの事。
頼みて将と為す所の者は、危を転じて安と為すの道有り、速勝に在るのみ。
国家、此の人を得て、真に乃ち民の司命、危を転じて安と為すの主なり、と。
李卓吾曰く、
戦を作すと曰ふと雖も、其の実は皆な是れ戦を欲せざるの意のみなるは、何ぞや。
蓋し此の如くならば則ち兵を鈍くす、不可なり。
此の如くならば則ち力屈す、不可なり。
此の如くならば則ち財く、不可なり。
此の如くならば則ち国、遠輸に貧しく、貴売きばいに財く、不可なり。
此の如くならば則ち中原の内は虚、私家の費、十のうち其の七を去り、公家の費、十のうち其の六を去る、不可なり。
唯だ敵の糧に因り、敵に食を務むる有りて、乃ち可なるのみ。
然れども亦た以て久しうす可からざるなり。
故に已むを得ざるに至りて戦ふ、むしろ速なるとも久なるなかれ、むしろ拙なるとも巧なるなかれ。
但だ能く速やかに勝つ、拙と雖も可なり、拙を愛するに非ざるなり。
以て速勝を巧の至りと為すを言ひ、而して人知らざるなり。
故に未だ巧にして久しき者有るを見ず、則ち凡そ師に久しき者、是れを真拙と謂ふ。
其の戦を慎重するは何如いかんや。
故に之を終ふるに勝を貴びて久しきを貴ばざるを以てす。
而して又た叮嚀ていねいに以て之に告げて曰く、此れ民の司命、国家安危の主なりと。
誠に以て慎まざる可からざるなり。
然らば則ち善く戦ふ者は上刑に服す、正に孫武子の赦さざる所ならん、と。

「善く戦ふ者は上刑に服す」は孟子離婁上篇。
民を思うが故にやむを得ずしての戦を致す、故に速やかに勝ちて止むを以て第一とす。
故にただ善く戦うを旨にする者は上刑に処すべきなり。
孟子曰く、
君、仁政を行はず、之が為に強戦するに於いてや、罪死にも容れられず、と。

語句解説

司命(しめい)
生殺の権力を握るもの。人の寿命をつかさどる神の名。
斟酌(しんしゃく)
事情を考慮に入れてとりはかること。相手の事情や心情などをくみとること。くみかわす意から。
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