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孔子

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論語-泰伯[5]

曾子やまひ有り、孟敬子もうけいし之を問ふ。
曾子言ひて曰く、
鳥の将に死せんとするや、其の鳴くや哀し。
人の将に死せんとするや、其の言ふや善し。
君子の道に貴ぶ所の者は三、容貌を動かして、すなは暴慢ぼうまんに遠ざかり、顔色がんしょくを正しくして、すなはち信に近づき、辞気じきを出だして、すなは鄙倍ひばいに遠ざかる。
籩豆へんとうの事は、則ち有司ゆうし存せり、と。

現代語訳・抄訳

曾子は病を得て死期が近づき、魯の大夫の孟敬子が見舞いに訪れた。
曾子が言った。
古語に謂う、死期の近づいた鳥の鳴き声は哀愁漂い、死期の近づいた人の言葉は善に通ずと。
故に汝に君子たる者の貴ぶべき所を三つ告げよう。
その為すところ、粗暴をしりぞけ傲慢に遠ざかるべし。
顔色は正しくして飾ること無く、表裏相通じ信に近づくべし。
言葉を発して言行一致し、道理に悖らざるを旨とすべし。
細かな礼式作法に関しては、それぞれの役人に任せればよい、と。

出典・参考・引用
久保天随著「漢文叢書第1冊」259-261/600,簡野道明著「論語解義」134-136/358
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備考・解説

講述に云く、
人窮まりて本に反る。
謂ふ、有生うせいの初め、人の性は本善なり、従ひ来りて欲するにしたがひ、遂に其の本を喪ふ、死に至らば則ち気き欲尽きて、復た本性に還る、故に言ふこと善し、と。
注に曰く、
道在らざる所無しと雖も、然も君子の重んずる所は此の三事に在るのみ。
是れ皆な身を修むるの要、政を為すの本、学者の当に操存省察すべき所にして、造次ぞうじ顚沛てんぱいの違ひ有る可からざるなり。
若し夫れ籩豆へんとうの事は、器数の末、道の全體、固にねざる無し。
然れども其の分は則ち有司の守にして、君子の重んずる所に非ず、と。
程子曰く、
容貌を動かすとは、一身を挙げて言ふなり。
周旋しゅうせん禮にあたれば、暴慢ここに遠ざかり、顔色則ち妄ならざれば、ここに信に近く、辞気を出だして正中由り出だせば、ここ鄙倍ひばいを遠ざく。
三者は身を正して外に求めず、故に曰く、籩豆へんとうの事は有司存せり、と。
尹氏曰く、
中を養へば則ち外にあらはる。
曾子蓋し己を修むるを以て、政を為す本と為す。
若し乃ち器用事物の細は則ち有司存す、と。

語句解説

曾子(そうし)
曾子。曾参。春秋時代の思想家。字は子輿。孔子の弟子。孝行で知られ、「孝経」を著したとされる。
孟敬子(もうけいし)
孟敬子。魯の大夫で仲孫氏、名は捷。武伯の子。
鄙倍(ひばい)
心がいやしく理に背くこと。倍は背に通ず。
籩豆(へんとう)
竹で編んだ高杯と木の高杯。儀礼に用いる器の名。
有司(ゆうし)
役人・官吏のこと。
造次(ぞうじ)
とっさの場合。わずかの間。あわただしい様。あわてる様。
顚沛(てんぱい)
危急のとき。非常な難儀。顚はたおれる、沛はさかん、はげしい。
周旋(しゅうせん)
ぐるぐるめぐること。立ち居振る舞い。間にはいって取り持つこと。
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