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朱熹
近思録-存養[8]
聖賢の千言万語は、只だ是れ人の已に放てる心を将ちて之を約め、反復して身に入り来たらしめんことを欲するのみ。
自ら能く上に向かひ尋ね去かん、下学して上達するなり。
現代語訳・抄訳
聖賢の様々な言葉は、いずれも人のすでに放溺したる心を収斂して反復させ、身の内へと入り来たらしめることを欲するのみ。
人は常に自らの理想の姿へと向かい尋ねてゆかねばならない。
自らを省みて始めて上達の道が開けるのである。
- 出典・参考・引用
- 久保天随著「漢文叢書第10冊」256/556,塚本哲三編「近思録・伝習録」91/478
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備考・解説
程明道の語。
心は腔子の裏に在らんことを要す、と続く。
言う心は、常に自らの心に反りて以て学ぶを要するのみ。
聖賢の垂訓の多端は、其の旨帰を求むれば、則ち此の心を存せんと欲するに過ぎざるのみ。
心、外に馳せざれば、則ち学問、日に高明に進まんや。
朱子曰く、
孟子の放心を求む、乃ち開示要切の言、程子も又た之を発明し、曲に其の旨を尽す、学者宜しく服膺して失ふこと勿らんや、と。
語句解説
- 収斂(しゅうれん)
- 引き締まること。取り集め収めること。
- 垂訓(すいくん)
- 後世に教訓を示すこと。垂教。
- 多端(たたん)
- 多事。仕事が多いこと。複雑で多岐にわたること。
- 旨帰(しき)
- 趣旨。目的。物事の中心となる趣き、理由。
- 服膺(ふくよう)
- 心に留めて忘れないこと。ぴったり身につける意。
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