孔子
論語-憲問[35]
子曰く、
我れを知る莫きなるかな、と。
子貢曰く、
子曰く、
天を怨みず、人を
我を知る者は、其れ天なるか、と。
現代語訳・抄訳
孔子が言った。
我を本当に知る者は居らぬであろう、と。
子貢が言った。
どうして先生を知る者の居らぬことがありましょう、と。
孔子が言った。
時勢に合わずとも天を怨むことなく、道理に合わずとも人を咎めることなく、常に自らに
我を本当に知る者は、それ天に違いない、と。
- 出典・参考・引用
- 久保天随著「漢文叢書第1冊」456-457/600,簡野道明著「論語解義」242-243/358
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備考・解説
我を知る者が天なる所以は、天とその心を一にするが故なり。
事物に処して己を省みるは身を修むるの道なり。
蒙引に云く、
言はんとする子を知らざる所の者は安くにか在る、下学する者は今日に一物を
久しければ則ち自然に天を知り命を立つ、而して万境
注に曰く、
天に得ずして天を怨みず、人に合はずして人を
此れ但だ自ら其の己に
甚だ人に異なるを以て、其の知るを致すこと無きなり。
然も深く其の語意を味へば、則ち其の中に自ら人を知るに及ばずして、天独り之を知るの妙を見る。
蓋し孔門に在りて、惟だ子貢の智、
程子曰く、
天を怨みず、人を
また曰く、
下学上達は、意、言表に在り、と。
また曰く、
学者須らく下学上達の語を守るべし、乃ち学の要は、蓋し凡そ人事を学びて、
仁斎曰く、
何をか天之を知ると謂ふか。
曰く、
天に心なし、人の心を以て心と為す。
直なるときは則ち悦び、誠なるときは則ち信ず。
理到るの言は、人服せざること能はず、此れ天下の公是にして、而して人心の同じく然る所、此れを以て自ら楽しむ。
故に曰く、我を知る者は天なるかと。
この理や、磨けども
当時に
此れ聖人の自ら恃みて
語句解説
- 孔子(こうし)
- 孔子。春秋時代の思想家。儒教の始祖。諸国遊説するも容れられず多数の子弟を教化した。その言行録である論語は有名。
- 子貢(しこう)
- 子貢。春秋時代の衛の学者。端木賜、字は子貢。孔門十哲の一人。利殖に長け弁舌に優れる。孔子には「往を告げて来を知る者なり」と評された。
- 洞然(どうぜん)
- つつぬけでひらけている様。転じて、はっきりとわかる様。明らか。
- 赫著(かくちょ)
- 顕著。著明。
- 欣然(きんぜん)
- 喜んで快く物事を行なう様。よろこびの顔。楽しんで笑う意。
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