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朱熹

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近思録-存養[1]

或ひと問ふ、
聖、学ぶ可きか、と。
濂渓先生曰く、
可きなり、と。
要有りや、と。
曰く、
有り、と。
請ひ問ふ。
曰く、
一を要と為す、一とは無欲なり。
無欲なれば則ち静にして虚、動にして直なり。
静にして虚なれば則ち明、明なれば則ち通ず。
動にして直なれば則ち公、公なれば則ちなり。
明通公溥めいつうこうふちかからんか、と。

現代語訳・抄訳

ある人が問うて言った。
聖人は学びて至るものでしょうか、と。
濂渓先生が言った。
至るべし、と。
要道は有りましょうか、と。
先生が言った。
有り、と。
請いて問うた。
先生が言った。
一を要と為す、一とは無欲である。
無欲なれば静にして虚、動にして直となる。
静にして虚なれば明となり、明なれば天地と道を通ず。
動にして直なれば公となり、公なれば遍く万物と調和を致す。
明にして通じ、公にしてあまねきは、聖人と為るに近からんか、と。

出典・参考・引用
久保天随著「漢文叢書第10冊」251-252/556,塚本哲三編「近思録・伝習録」89/478
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備考・解説

虚は捉われ無し、故に明通す。
直は惑い無し、故に公にして至らざる無し。

通書第二十章聖学篇に在り。
注釈に曰く、
一は純一にしてまじはらざるなり、湛然無欲にして、心乃ち純一たり。
静にして存する所の者、一なれば、人欲消えく、故に虚、虚なれば則ち明を生じて能く天下の理に通ず。
動にして存する所の者、一なれば、天理流行す、故に直、直なれば則ち大公にして能く天下の務にあまねし。
動静は惟れ一、明通公溥めいつうこうふにして、聖とるの功用にちかし。
朱子曰く、
此の章の旨、最も要功為り、学者よく深くならつとめて之を行へば、則ち以て無極の真、両儀四象の本、皆な此の心に外ならざることを知る有りて、日用の間、自ら別に力を用ふる処無し。

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