孔子
詩経-小雅[節南山之什][節南山]
詩序
節南山は、家父の幽王を
詩文
節たる
憂心
国既に
節たる彼の南山、
天
国の均を
天子を是れ
問はず
君子
君子
憂心
自ら政を
彼の
我れ四方を
既に
其の心を懲らさず、
家父
現代語訳・抄訳
詩序
節南山は、大夫である家父が無道の臣を重用する幽王を風刺したものである。
詩文
あの高くそびえたる南山は、石
厳粛たるべき大師の位に尹氏が在る、天下万民がそのあり方を見る。
その姿をみれば、人々の心は憂いで灼かれるが如く、戯れの言葉すらも発する気持ちになれない。
国は既に傾き衰乱の様相を呈している、どうして察して鑑みることをせぬのだろう。
あの高くそびえたる南山は、草木実りて盛んである。
国を興すべき大師の位に尹氏が在る、然るにこの国の治まらざるをどのように思うのか。
天はしきりに天罰を示し、疫病天災を降された。
人々は嘉言を発することなく、怨嗟の声がやむことも無い。
尹氏は大師の位に在る、これ周の本を司る職。
国を平らかにし、四方を維持し、天子を補佐し、人民を安んず。
天意に適わずして嘉せられず、大師に相応しからざるを用いて、天の禍乱を招き、国家民衆を空乏させてはならない。
上に在る者が模範を示さず親愛せざれば、民衆が信じることはない。
国のゆくべき道を問い、国政を務めずして、君子を欺くことに終始してはならない。
心を平らかにし、その職に足らざるを罷免せよ、小人に惑いて国を危うくしてはならない。
小事に明らかなるだけの姻戚の者を私して、高位に就かせてはならない。
天は均しからず、人々に困窮大難を降された。
天は恵まず、人々に大罪天罰を降された。
君子がもし至誠要道に至らば、人々の心は安らぎを得るに至るであろう。
君子がもし公平無私に至らば、人々は私情を去って和睦を得るに至るであろう。
然るに今、天に嘉せられず、故に世に禍乱は已まず。
月を経れば大災困難が生じ、人民の心は荒んで安んぜず。
憂いの心で悪酔いするが如く、どこに国を治め安んずる者が在るだろうか。
王は自ら国政に務めず、尹氏を用いて終に人民を苦しむ。
王が車駕す、その引きゆく馬は肥えて隆々としている。
然るに我が四方を見てみれば、皆な困窮退縮して馳すべき所無し。
尹氏は私情に溺れて満たさんと欲し、力を以て相争う。
満たすを得たれば心収まり、酒を人に進めるが如くに相親しむ。
天はその治世に不平を生じ、我が王はそれを察して安んぜんと務めることを得ず。
小人を得てその心を懲らしめず、却ってこれを正さんとするを怨む。
家父は詩を作し、幽王のために政治の乱れたるを究め諭す。
以てその心の正しからざるを示し改め、以て国家を安んじ人民を養わんと。
- 出典・参考・引用
- 根本通明著「詩経講義」5-8/237,林英吉著「五経講義・詩経・書経之部」第一冊140-141/268
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備考・解説
節は高く鋭く秀づる貌なりとある。
懲は止なりとある。
不弔は
躬は天子自ら実践すること。
親は天子自ら親しむこと。
式夷は心を平らかに、式已は当たらざるをやめること。
訛は化。
本来、訛は正しからぬ意を含むので、正しからざる心を善へと化すことを言うのであろう。
ここでの君子は在位の高徳の者を指す。
語句解説
- 巌巌(がんがん)
- 岩が積み重なるような様。古く山巌は聖なる所とされた。
- 赫赫(かくかく)
- かがやかしく盛んな様。あかあかと光輝く様。
- 師尹(しいん)
- 注釈に大師(三公の一で天子の教育に当たった)の尹氏の意であると記されている。
- 戯談(ぎだん)
- 冗談。本気ではない戯れの言葉。
- 薦瘥(せんさ)
- 多難。薦(しき)りに瘥(や)ましむ。薦は重ね重ねの意で瘥は病の意。
- 喪乱(そうらん)
- 世の乱れ。多くの人が死んだり災難が生じること。
- 大師(たいし)
- 官名。周代に音楽のことをつかさどった官の長。また、三公の一で天子の教育に当たる職。なお、大軍の意や高僧の称号として用いられることもある。
- 昊天(こうてん)
- 大空。
- 瑣瑣(ささ)
- こせこせする様。こまごまとしてわずらわしいこと。
- 姻亜(いんあ)
- 婚姻による親戚のこと。妻の親類の者。
- 膴仕(ぶし)
- 厚禄をもってつかえること。禄の多きは高位に就くことを意味する。
- 鞠訩(きょくきょう)
- 鞠凶。凶を告げる。鞠は困窮、訩は乱。
- 大戻(たいれい)
- 大罪。
- 悪怒(あくど)
- にくみ怒ること。
- 国成(こくせい)
- 治平。
- 項領(こうりょう)
- はっきりと目立つ首筋。大きなうなじ。
- 蹙蹙(せきせき)
- せばまること。縮こまって伸びない様。しゅくしゅくとも読む。
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