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熊沢蕃山

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孝経小解-卿大夫[4]

天子の卿大夫、諸侯、百官、天下の人に逢ふて私の事なし。
いふべきは公事のみ。
是れ法に非ざれば言わざるなり。
行事は君のため、天下のため、さては文武の業なり。
枢機すうきの発は栄辱の主なり、是れ口好くちよみを出だし、兵をおこす、君子の慎む所なり。
えらびすてそしるべき言行なければ、天下に満ちて過ちなく、人の怨悪えんおを取ることなし。
言は心の声なり、仁心より出づるものは仁言じんごんなり。
行は心の動きなり、仁心より動くものは仁行なり。
たとひ過ちありとても、仁者の過ちなれば、人、感心する事ありて、怨悪えんおする事なし。

出典・参考・引用
中江藤樹訳、熊沢蕃山(伯継)述「孝経」20/88
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古典
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備考・解説

黄石斎曰く、
卿大夫の天子に事ふる、亦た猶ほ之れ其の親に事ふるがごとし。
而して尊厳はこれに倍せり。
諸侯は優に處り、卿大夫は劇に處る。
公侯の得失、邦国の治、不治天子は諸侯を責めず、而して卿大夫を責む。
故に卿大夫の愛敬は天下に合し、而して後ち天子に致る。
仲山甫ちゅうざんぽに非ずんば、未だ之を語る能はざるなり。

優はゆったり、劇は繁劇。
人主は大きく構えて下を容れる。
手足となってこれを輔佐するは卿大夫にして、よくその才を発揮せしむるは諸侯なり。
故に“諸侯は優に處り、卿大夫は劇に處る”という。

語句解説

仲山甫(ちゅうざんぽ)
仲山甫。樊侯(はんこう)。周代の魯の献公の子。宣王の卿士となって周室を輔佐。周王朝中興の臣。詩経の蒸民篇にその偉業が讃えられている。
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