孔子
詩経-小雅[節南山之什][小宛]
詩序
小宛は、大夫の幽王を
詩文
我れ心を
人の
彼の
中原
彼の
我れ日に
交交たる
哀しきかな我が
粟を握りて
温温たる恭人、木を
戦戦兢兢として、薄氷を踏むが如し。
現代語訳・抄訳
詩序
小宛は志ある臣下が幽王の無道を戒めるために作ったものである。
詩文
美しき小鳥が空を飛んでゆく。
私は世の有様に心憂い、先人の治世を思う。
夜が明けるまで思いを馳せて、文武の治徳を懐かしむ。
真の人物は酒を飲むも深くつつしみ節度を保つ。
軽薄なる人物は、一たび酔えば自己を失う。
人はその守るべきところを守りて尽くさねばならぬ、天命は決して待ってはくれない。
土地に豆があれば庶民はこれを採りて養い継ぐ。
桑虫の子があれば
お前の子に教え諭すのだ、その養い継ぐべきことを。
あの水辺の小鳥は、自由気ままに飛び鳴いている。
我もまた我が道を往かん、お前もまたお前の道を往け。
朝早く起き夜更けに寝る、日々を尽くしてお前の祖先を恥かしめぬようせねばならぬ。
斑鳩が庭に集いて粟を食んでいる。
哀しいかな、我が困窮や、まるで牢獄の中にあるようだ。
粟を握りて占うも、そんなことで何になろう。
温恭で謹み深い人が細心を尽くして接するように、恐れおののくような注意深き心で谷に臨むように、戦戦兢兢たる心で薄氷を踏むように、日々を尽くして往かねばならぬ。
- 出典・参考・引用
- 根本通明著「詩経講義」18-20/237,林英吉著「五経講義・詩経・書経之部」第一冊147-148/268
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備考・解説
朱子は詩序に関して「兄弟乱に遭うて相戒めるの詞にて王を風刺するに非ず」と述べている。
また第一段の鳴鳩に関して、注釈には「鳴鳩は陸璣の草木疏に斑鳩とあるが誤りなり。実はたかに類したる小鳥にてかむりどりとも言うが、これも確かとはし難い。無理に我が邦の鳥に引き付けるも及ばぬことである」と記されている。
第五段の桑扈(斑鳩)は通常、粟ではなく肉を食う。
故に粟を啄ばむは困窮をあらわす。
語句解説
- 幽王(ゆうおう)
- 幽王。周十二代目の西周最後の王。褒姒(ほうじ)を溺愛して諸侯を軽んじ、太子を廃嫡。異民族の犬戎と手を組んだ申侯によって滅ぼされた。後、廃嫡された宜臼が継いで東周となる。
- 翰飛(かんぴ)
- 高く飛ぶこと。
- 憂傷(ゆうしょう)
- 思い悩み悲しむこと。心を痛ませること。
- 明発(めいはつ)
- 明け方。夜明け。
- 斉聖(せいせい)
- つつしみ深く知徳あふれる様。斉は中正、聖は通暁・通明。
- 温克(おんこ)
- 温和で節度があること。穏やかで寛容なるも自らには節操をもって律していること。
- 螟蛉(めいれい)
- 桑虫。青虫。また、養子の異称(以我蜂が青虫を養って自分の子にしていると思われていたことから)。
- 蜾蠃(から)
- 似我蜂(じがばち)。青虫などの横腹に卵を産み付けて地中に埋め、幼虫の餌とする。昔の人は地中に埋められた青虫が蜂となって出てくると勘違いした。
- 教誨(きょうかい)
- おしえさとすこと。
- 脊令(せきれい)
- 鶺鴒。水辺に住む小鳥の名。
- 桑扈(そうこ)
- 斑鳩(はんきゅう)。いかるが。まめころがし。まめまはし。澄んだ美声で鳴く鳥。
- 塡寡(てんか)
- 困窮すること。
- 惴惴(ずいずい)
- おそれるさま。おそれおののくさま。
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