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熊沢蕃山

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孝経小解-諸侯[5]

深淵にのぞみ、薄氷を踏む時は、懼慎くしんの外、他念なし。
諸侯、富貴なれども、危地なれば、戦兢せんきょうの戒めあり。
易のけんの九三も、下の上にて諸侯の位なれば、戒め有り。
五等ともに戒慎恐懼かいしんきょうくあらずといふことなけれども、取り分け諸侯に重し。
戒懼かいくして長く国を保ちて子孫に伝へ、先祖父母の祭祀に奉ずるを孝とす。
天下、道あるにも道なきにも、危地にして戒懼かいくふかき人情時勢あり、諸侯善にして懼れふかきは道なき世の事なり。
大君の恥なれば、治道に志あらん大君のため或問わくもんに論ず。
生まれながらの上臈じょうろうはしろしめがたき人情事変あり。
大学或問にものせたり。
詩は小雅小旻しょうがしょうびんの篇なり。

出典・参考・引用
中江藤樹訳、熊沢蕃山(伯継)述「孝経」17-18/88
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古典
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備考・解説

藤樹曰く、
詩を引く、二旬、以て敢て毀傷せざるの敬心を形容す。
是れ乃ち命孝の心法、慎独の要なり。
曾子の此の詩を詠ずるや、弟子をいましむるなり。
但に諸侯のみ当に然るべしとすに非ざるなり。

語句解説

上臈(じょうろう)
高位の者、身分の高い者。日本においては僧位を臈(ろう)で数え、のち在俗にも用いられる。
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