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熊沢蕃山

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孝経小解-諸侯[2]

制節は、一国の貢物を用ふる法なり。
度を謹むは、在国の諸侯の、行義、作法、禮ある事を慎むなり。
古は、一国を以て一人に与へず、一人を以て一国を治めしむ。
故に一国の富、大なりといへども国の為、民の為に用ひんとすれば、よく心を用ひざれば足らざるものなり。
運気にて或いはひでり、或いは風水等の損毛そんもうあり。
其の時に国中の餓えざる貯へあり、又た夷狄いてきの難に備へあり。
兵を用ふるには、積米せきべい多からざれば、内、堅固ならず、兵、強からず。
国中には毎年、井、川池せんちつつみ、船、橋、路次等の普請ふしんあり。
百官の屋、町民の屋の破損あり、山澤さんたくのあれず、材木の多くなる制法あり、士家しか、町、在々ざいざい火難の備へあり。
貧乏のすくひ、諸官諸職の役領やくりょう、冠婚葬祭のよう多ければ、無用心にては、一国の富も足り難し。
故に公の一年の歳入を四にして、三を以て諸用を調へ、一を貯へとす。
是れ則ち、天道の四時に則るものなり。
春生じ夏長じ、秋実り、冬蔵すの道なり。
三年積んで一年の年貢あり、九年積んで三年の貯へあり、三十年積んで十年の用あり、三十年を通と云ふ、此の道なければ、水旱すいかん、風火、兵事の備へ全くからず、是れ制節の第一なり。
一国の富の大なり。
其の上にかくの如く貯へありといへども、民と共にして君一人驕りなければ、満ちて溢れざるなり。
詳しき事は長々しければ、或問わくもんに論ず。

出典・参考・引用
中江藤樹訳、熊沢蕃山(伯継)述「孝経」16/88
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語句解説

損毛(そんもう)
損失。損亡。利益を失うこと。
在在(ざいざい)
あちこちの村里。いたるところ。
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