范曄
後漢書-列傳[楊震列傳][39]
四年、復た太常を拝す、十年に免ぜらる。
十一年、諸の恩沢を以て侯と為る者皆な封を奪はる。
彪、
後に子の脩、曹操が為に殺さる、操、彪に見えて問ふて曰く、
公、何ぞ痩せるの甚だしきか、と。
対へて曰く、
愧ずるは
操、之が為に容を改む。
現代語訳・抄訳
建安四年、楊彪は再び太常を任命され、建安十年に免ぜられた。
建安十一年、朝廷の恩沢を受けて諸侯となっていた者達はその封土を奪われた。
漢の命運が尽きて曹操の傀儡政権になると、楊彪は足が動かないと称して朝廷に参内しなくなり、そのまま十年が過ぎた。
しばらくして、息子の楊修が曹操に殺された。
曹操は楊彪に見えて問うて云った。
公はどうしてそれ程までに痩せたるか、と。
楊彪は応えて云った。
金日磾のような先見の明も無く、老牛が舐犢の愛を懐かしく思うように忘れられぬ自分を愧じてのことです、と。
曹操はこれを聞いて容を改めたという。
- 出典・参考・引用
- 長澤規矩他「和刻本正史後漢書」(二)p1034
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語句解説
- 恩沢(おんたく)
- 恵み。なさけ。
- 漢祚(かんそ)
- 始祖から伝わってきた国家の運命。
- 脚攣(きゃくれん)
- 足が引きつること。
- 曹操(そうそう)
- 曹操。三国時代の魏の始祖。治世の能臣、乱世の姦雄と称せらる。政治、兵法に優れると共に詩文にも才を発揮。献帝を擁して天下に覇を唱えた。
- 金日磾(きんじつてい)
- 金日磾。前漢の政治家で匈奴族の人。武帝に仕え、金姓を賜った。註釈には「二人の子供が居て武帝に可愛がられたが、宮女をたぶらかす所を見て息子を自ら殺した」という故事がみえる。
- 舐犢の愛(しとくのあい)
- 親が子供を溺愛することのたとえ。親牛が子牛を舐めて愛しむ様から。
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