孔子
書経-虞書[大禹謨][13-16]
帝曰く、
来たれ、
降水
汝じ
汝じ
人心は
愛す可きは君に非ずや、畏る可きは民に非ずや、衆や元后に非ざれば何をか
惟れ口は好みて出だし
禹曰く、
功臣を
帝曰く、
禹、官占は惟れ先づ志を
朕が志は先づ定まり、
禹、拝し
帝曰く、
惟だ汝に
現代語訳・抄訳
帝舜が云った。
来たれ、禹よ。
洪水の吾を戒めるに、天地の運行に従いてこれを治め天下を安んずるに至らせしは、これ汝の賢たる所以である。
国家に勤め、少しの富も求めず、大功あるも意に介さぬは、これもまた汝の賢たる所以である。
汝は己の才に驕ることも、己の功を誇示することもせぬ。
故に天下に誰も汝と競わんとするものはいない。
汝の徳は天下を安んずるに足り、汝の功績は天下に讃えるに足る。
そして何より天命は今、汝の元に存するのだ。
禹よ、今こそ帝位に即け。
人心は私を為し易く、道心は顕れ難きものである。
故に精一を旨とし、道心を内に存して人心を従わせ、常に中なるを執るのだ。
天理に存せざる言は聴かぬが善い、天理に沿わざる謀は用いてはならない。
人君たれば父母の如くに民より愛され、民を天地の如くに畏れ貴ばねばならぬ。
民はその生を人君に頼り、そして人君はその民と共に在らずして何を守るべきものがあるだろうか。
己を修めよ。
その尊位を慎み、敬を持して天徳を修めよ。
天下万民を安んぜざれば、天よりの禄も終には途絶えよう。
善なりとして口より出だすも、重ねればやがて禍となりて争いが生じる所以となる、故に吾は再びは言うまい、と。
禹は云った。
功ありし臣は幾多と居ります故、各々を卜した後に吉と出た者に従いましょう、と。
帝舜は応えて云った。
禹よ、占は志に断じきれぬものありて後に、その吉凶を得るのである。
吾が志は既に定まり、これを皆に諮るに、皆が禹の帝位に即かんことを願った。
人心従がえば自然と鬼神もこれに依り、亀筮も自ずと従がうものである。
既に明らかで有るにも関わらず、更に占断して吉を願うは神意に逆らうものである、と。
禹は丁寧に拝礼して、固辞した。
帝舜は云った。
受けよ。
天命は汝に在るのだ、と。
- 出典・参考・引用
- 林英吉著「五経講義」書経之部14/158
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語句解説
- 舜(しゅん)
- 舜。虞舜。伝説上の聖王。その孝敬より推挙され、やがて尭に帝位を禅譲されて世を治めた。後に帝位を禹に禅譲。
- 禹(う)
- 禹。夏王朝の始祖で伝説の聖王。父の業を継いで黄河の治水にあたり、十三年間家の前を通っても入らなかった。後、舜に禅譲されて王となる。
- 儆(けい)
- いましめる。神意をおそれいましめる意がある。
- 満仮(まんか)
- 満假。おごりたかぶること。仮は「一時的」の意がある。
- 丕績(ひせき)
- すぐれた治績。
- 歴数(れきすう)
- 暦数。帝王が天命を受けて帝位につく巡りあわせの意がある。
- 元后(げんこう)
- 人君、天子。
- 稽(けい)
- いたる。とどまる。かんがえる。神意を考えるの意がある。
- 詢(じゅん)
- はかる。とう。神意にはかるの意がある。
- 后(こう)
- きみ。きさき。のち。神話的な帝王に后のつくものが多い。
- 四海(しかい)
- 世の中のこと。古代において世界は四方を海に囲まれていると考えていた。
- 戎(じゅう)
- 兵。軍隊。いくさ。えびす。
- 枚卜(まいぼく)
- 卜することを告げずに卜すること。
- 元亀(げんき)
- 大亀。甲羅の亀裂で占いを断ずること。
- 僉同(せんどう)
- 僉は「ともに」「ことごとく」の意。共に祝祷する意も持つ。
- 亀筮(きぜい)
- 亀卜と易筮。
- 稽首(けいしゅ)
- 敬礼。頭を地につけてしばらくとめる礼。頓首と共に中国で最も重い礼。
- 諧(かい)
- あう。ととのう。やわらぐ。神意にかなうことの意がある。
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