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范曄

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後漢書-列傳[竇何列傳][27]

びょうしんに謂ひて曰く、
始め共に南陽に従ひて来たり、倶に貧賤を以て、省内に依り以て富貴を致す。
国家の事、亦た何ぞ容易ならん。
覆水収む可からず。
宜しく之を深思し、且つ省内と和せよ、と。
進の意、更に狐疑こぎす。
しょう、進の計を変するをおそれ、乃ち之を脅して曰く、
交搆こうこうすでに成り、形勢は已にあらはれ、事の留変りゅうへん生ずるに、将軍復た何ぞ待つを欲し、而してつとに之を決せざらんや、と。
進、是に於いて紹を以て司隸校尉と為し、假節かせつし、専命して撃断す。
従事中郎王允を河南尹と為す。
紹は洛陽の武吏に方略せしめて宦者を司察しさつし、而して董卓等を促して驛上えきじょうに馳せしめ、兵を平楽観に進まんことを欲す。
太后乃ち恐れ、ことごと中常侍小黄門しりぞけ、里舎りしゃに還らしめ、唯だ進のもとより私する所の人を留め、以て省中を守る。
もろもろの常侍小黄門は皆な進を詣で謝罪し、唯だ措置そちする所となる。
進の謂ひて曰く、
天下匈匈、正に諸君を患ふのみ。
今、董卓は至りて垂す、諸君は何ぞ早に各の国に就かざらんや、と。
袁紹の進に勧むるに便すなはち此に於いて之を決さんと、再三に至る。
進は許さず。
紹は又た書を為し諸州郡に告げ、詐して進の意を宣し、中官親属を捕案せしむ。

現代語訳・抄訳

何苗が何進に進言して云った。
義兄と共に南陽に在りし頃、共に貧しく賤しい身分でありましたが、今では宮内に依りて富貴な身分となりました。
国家の事がどうして容易きことがありましょうや。
覆水盆に返らずという言葉もあります。
どうか沈思熟考し、宦官を排斥することなど止めて、宮廷内を治め和することを考えるべきです、と。
何進はますます優柔不断に陥った。
これを知った袁紹は何進が宦官掃蕩の計画に怖気づくことを恐れ、何進を脅して云った。
既に事を決する準備は整いました。
形勢は既に発露し、変革が生ぜんとしている今、何を待つ必要がありましょうか。
速やかに事を決するのが最善であります、と。
袁紹に促された何進は、袁紹を司隸校尉として仮節の権限を与え、命を発して事を断じた。
また、従事中郎であった王允を河南尹とし、洛陽の治安経済を保たせた。
袁紹は洛陽の武吏を用いて宦官の動向を調べさせ、董卓などの地方に居た諸将に呼びかけて都へと向かわせ、兵を平楽観に進めることを何進に要請した。
これに恐れを抱いた何太后は、中常侍から小黄門までその職にあった者を尽く罷免して郷里に帰らせ、何進に親しい者だけを残して宮中を守らせた。
諸々の常侍小黄門の職にある者は、何進を訪ねて謝罪し、その裁断を仰いだ。
やがて何進は呼びかけに集まった諸将に云った。
天下が騒然としているのは、ただ諸君の動向を患えてのことである。
董卓がもうすぐ至らんとするに、諸君はどうして速やかに所領に帰りて治めぬのか、と。
袁紹は再三にわたって何進に更に宦官一掃を進めることを進言したが、何進は許さなかった。
そこで袁紹は書を諸州郡に送って何進の意であると偽り、中官親属を捕案するように命じた。

出典・参考・引用
范曄著・章懐太子注・鈴木義宗点「後漢書」32/53
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語句解説

狐疑(こぎ)
疑い深く心が定まらないこと。
袁紹(えんしょう)
袁紹。後漢末の武将。名門に生まれるも優柔不断、河北に勢力を誇るも曹操に敗れる。袁紹死後、袁家は世継ぎ争いで没落し曹操に滅ぼされた。
司隸校尉(しれいこうい)
洛陽・長安周辺における治安を司る監察官。中央の官吏、大臣等の弾劾を行う。
仮節(かせつ)
仮節。假節。多くの将軍の上に立つ将軍は節を与えられてその権限を行使した。仮節を持っていると軍法違反者を断罪することができた。
河南尹(かなんい)
首都近郊の治安(主に民衆)と経済、そのほか様々な責務を負う役職。
方略(ほうりゃく)
計画、計略。
司察(しさつ)
司察。伺察。情勢を探り調べる。
董卓(とうたく)
董卓。後漢末の武将。混乱に乗じて中央に進出。献帝を擁立して政権を掌握し覇を唱えた。討伐軍が組織されると長安に遷都。後に呂布に裏切られて殺された。
平楽観(へいらくかん)
宮殿の近くにある演習場。
中常侍(ちゅうじょうじ)
常に皇帝の側にいる職で高位の職。
小黄門(しょうこうもん)
官名。
措置(そち)
処置すること。とりはからって始末をつけること。安んじていること。
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