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荘子

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荘子-外篇[達生][9]

紀渻子きせいし、王の為に闘鶏を養ふ。
十日にして問ふ、
鶏はすでにするや、と。
曰く、
未だなり、まさ虚憍きょきょうにして気をたのむ、と。
十日にして又た問ふ、曰く、
未だなり、猶ほ嚮景きょうけいに応ず、と。
十日にして又た問ふ、曰く、
未だなり、猶ほ疾視しっしして気を盛んにす、と。
十日にして又た問ふ、曰く、
ちかし。
鶏に鳴く者有りと雖も、すでに変ずる無し。
之に望むに木鶏に似たり。
其の徳はまったし。
異鶏いけいに敢へて応ずる者無く、かへりて走る、と。

現代語訳・抄訳

闘鶏を飼う名人であった紀渻子が、斉王のために闘鶏を養った。
十日経って王が問う。
そろそろ闘わせてはどうか、と。
応えて曰く、
まだいけません、敵も見ておらぬに気の立つところがあります、と。
更に十日経って王が問うに、応えて曰く、
まだいけません、敵の影が見えただけで応戦しようとするところがあります、と。
更に十日経って王が問うに、応えて曰く、
まだいけません、相手に向かうところが強すぎて己の気を蔵するに至りません、と。
更に十日経って王が問うに、応えて曰く、
そろそろ良いでしょう。
他の鶏が鳴こうとも少しも動かされることがありません。
一見すると木鶏の如く、その徳は全きものとなりました。
いかなる鶏と雖も、これには相手にならずして逃げ出すことでありましょう、と。

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語句解説

虚憍(きょきょう)
虚なる驕り。空威張り。憍は驕に通ずる。
嚮景(きょうけい)
響と影。相手のことを指して、相手に動かされることをいう。
疾視(しっし)
にらみつけること。
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