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司馬遷

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史記-列傳[李將軍列傳][19]

太史公曰く、
伝に曰く、其の身正しければ、令せずして行はれ、其の身正しからざれば、令すと雖も従はずと。
其れ李将軍の謂ひなり。
余、李将軍をたるに俊俊しゅんしゅんとして鄙人ひじんの如く、口に道辞どうじする能はず。
死するの日に及び、天下の知ると知らざると、皆、為にことごとく哀しむ。
彼の其の忠実の心は誠に士大夫に信ぜられしなり。
諺に曰く、桃李言わざれども下自ずから蹊を成すと。
此の言は小なりと雖も、以て大にたとふ可きなり、と。

現代語訳・抄訳

太史公は云う。
古くから伝わる言葉に次のようなものがある。
其の身正しければ、令せずして行はれ、其の身正しからざれば、令すと雖も従はずと。
これは当に李将軍のことであろう。
私は李将軍の事績を追ってみたが、常に誠で謹直の態に溢れ材力人に過ぐるも少しも偉そうではなく、如何ようにも表現し難いものがある。
李将軍が死せし日には、その親疎に関わらず天下こぞって惜しんだとされる。
彼の其の忠誠を誰しもがわかっていたのであろう。
諺に次のような言葉がある。
桃李言わざれども下自ずから蹊を成すと。
この言は小と雖も、大いに戒めの言葉とするべきであろう、と。

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語句解説

俊(しゅん)
材智すぐれる様。万人に優れる人。高い。
鄙人(ひじん)
身分のいやしい者。また、へりくだっていう言葉。
道辞(どうじ)
言うこと。
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