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孔子

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易経[革卦]

革は巳日みのひに乃ちまこととす、元亨利貞げんこうりてい、悔ひ亡ふ。
彖傳たんでんに曰く、
革は水火相ひ息み、二女同居して、其の志の相得ざるを革と曰ふ。
巳日みのひに乃ちまこととす、革めて之れ信なり。
文明にして以てふ、大いにこうを以て正し、革めて当る、其の悔い乃ち亡ふ。
天地、革まりて四時成り、は命を革め、天に順ひて人に応ず、革の時、大なるかな。
象傳に曰く、
澤中たくちゅうに火有るは革、君子以て歴を治め時を明らかにす。
初九はかたむるに黄牛の革を用ふ。
象傳に曰く、
かたむるに黄牛を用うるは、以て為す有る可らざるなり。
六二は巳日みのひに乃ち之を革む、征きて吉、咎無し。
象傳に曰く、
巳日みのひに之を革む、行かば嘉有るなり。
九三は征きて凶、貞にしてわろし、革言の三たびる、まこと有り。
象傳に曰く、
革言の三たび就る、又何くにかかん。
九四は悔ひ亡ふ、まこと有りて命を改む、吉。
象傳に曰く、
命を改むる之を吉なるは、志を信ずるなり。
九五は大人たいじん虎変す、未だ占はずして孚有り。
象傳に曰く、
大人たいじん虎変す、其の文はあきらかなり。
上六は君子豹変し、小人つらを革む、征くは凶、ていに居れば吉。
象傳に曰く、
君子豹変す、其の文はうつなり。
小人つらを革む、順にして以て君に従ふなり。

現代語訳・抄訳

革は時至ってまこととなる。性急なのは宜しくない。
恩賜の普くしてその革新が正なれば、悔ひあるも遂には悔ひは亡ぶ。
彖傳たんでんに曰く、
男女たる水と火は相息するも、二女たる澤と火は同居せず、其の志を相得ざらずして革新す。
時至ってまこととなり、ここに革新を決すれば信なり。
とほるを以て正し、革新を決す、一時に悔ゆともその悔い滅すべし。
天地は革新によりて四時明らかに、湯武は命を革め、天命に順いて人を導く、これ革新の大なるものなり。
象傳に曰く、
澤中に火有るは革新すべし、君子はこの時に当って歴を治め時を明らかにすと。
初九は固むるに黄牛の革を用いる。
象傳に曰く、
その心は妄りに動かずして自らを固めるべし。
六二は時至れば革新す、征きても吉にして咎無し。
象傳に曰く、
時が至りて革新せば、嘉の生ずるは必然なり。
九三は征きて凶、よろしきも叶わず、ただし忍従して革新せば、まことが生ず。
象傳に曰く、
革新進みて信のあらわる、この時に当って誰も逃避する所なし。
九四は悔い滅して清明なり、まこと有りて命を改む、吉なり。
象傳に曰く、
固くその志に存すれば、悔ゆと雖も必ずや吉となるなり。
九五は大人たいじんの虎の如く変じてその機運明らかなり、占わずとも人心掌握するは必然たり。
象傳に曰く、
大人虎変なるは、大人の志を煥発かんぱつせしむるを云うなり。
上六は君子の豹の如く変じて、小人従がう、征くは凶なれども、しきに居れば吉なり。
象傳に曰く、
君子豹変なるは、君子の志明らかに盛隆せし様を云うなり。
ここに至って小人はその貌を変じて、君子に順じて従がう、遂には心より革まらん。

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語句解説

巳日(君子豹変専用)(みのひ)
十二支の巳に当たる日。「天に十日あり、甲より戊に至るを前五日と為し、巳より癸に至るを後五日と為す」とあり、時宜を得し日を指す。尚、朱子は巳を已の誤りと解して「事成りて終わる日」としている。
孚(ふ)
まこと。はぐくむ、心の中に大切に抱きしめている気持ち。
元亨利貞(げんこうりてい)
易における乾の四徳。仁義礼智に通ず。元(おお)いに亨(とほ)る、貞(ただ)しきに利(よ)ろしと読む。
彖傳(たんでん)
彖は断に通じ、「さだめる」という意。伝は注釈書の意。易の一卦の義を定める辞をいう。孔子がつけたとされ、他に繋辭傳・象傳・説卦傳・文言傳がある。
湯王(とうおう)
湯王。天乙。成湯。殷王朝の始祖。賢臣伊尹を擁して夏の桀を倒した。後世に聖王として称賛される。
武王(ぶおう)
武王。周王朝の始祖。太公望を擁して殷討伐を成し遂げた。
鞏(きょう)
かためる。しばって、崩れないようにする。
征(せい)
積極的に変えんとすること。
大人(たいじん)
有徳者。また、君主、家長などの代表とする責任者の地位にいる者を指す場合もある。
炳(へい)
あきらか。明るく照りはえる様。
貞しき(ただしき)
自己の正しきによって他を感化せしむること。
蔚(うつ)
一団をなしてならぶさま。盛んに興ること。
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